少人数セミナー「森里海のつながりを清流古座川に見る」 2005年8月22日―8月26日

講師:フィールド科学教育研究センター 里域生態系部門紀伊大島実験所 助教授 梅本信也


 2005年8月22日(月)から26日(金)まで、紀伊大島実験所を拠点に清流古座川及び串本湾域でおいて、ポケゼミ「森里海のつながりを清流古座川に見る」が実施された。50名におよぶ多数の応募者からランダム抽選された10名(1名は急用で取りやめ)が参加した。参加した1回生は総人2名、法学3名、工学2名、農学2名であった。
 14時定刻集合・点呼確認、開講式、ガイダンスを行った。そのあと、紀伊大島の里域巡検をする予定であったが、天候不順のために予定を変更し、「古座川から串本湾の里域 第1,2部」「古座川における水質の歴史的変容」と題するスライド講義を約3時間行った。買出し、当番による自炊夕食後、23日からの実習内容や注意点の説明、調査チーム編成、調査拠点の設定のほか、夜半過ぎまで多様な議論や人生相談が行われた。(夜の議論や諸相談は毎日行われた。)
 2日目以降は、全長55kmの古座川の本流河口域から支流(ダムなし)、本流上流域(ダムあり)に至るそれぞれの調査地域にチームごとに移動し、ダムのあるなしと関連させながら、森里海構成要素とその連環を実感しつつ、里域構成要素の詳細な観察と住民に対する聞き取りを行い、データ蓄積とチーム間のデータ共有を図りながら、さらに、教員が与えた共通課題と各自が調査中に設定した自由課題についてのレポート作成をそれぞれ作成した。
 提出された9人分のレポートは、添付資料や挿入写真と共に膨大な量になった。タイトルは以下のようであった。「清流古座川における里域の実態と地区間の関連」(A4版3ページ)、サンマ寿司とサルから考える里域」(5p)、「古座川流域の寿司と水質汚濁から森里海の関連性を見出す」(7p)、「人為による里域の変容とサンマ寿司について」(8p)、「古座川に見る人と自然のつながり」(6p)、「森里海の連環を清流古座川に見る−ダムのもたらしたものと寿司」(8p)、「古座川周辺域の食・祭り・民話文化のつながりから里域の維持と形成条件を探る」(16p+文書資料)、「清流古座川を通じて人間を見る&なれずし in 古座」(4p)、「古座川で結ばれた地域の調査」(9p)。いずれも丹念な観察と聞き取りを精確に表現した力作であり、教員が事前に想定していた諸仮設をはるかに超える、大変に興味深い新仮説や考え方が多数提案されていた。
 調査を重ねるごとに、参加学生たちの目の輝きが増していくのが大変に印象的であった。夜の諸相談時間帯でも積極性が日に日に強化され、心の交流が濃密となっていった。多くの参加学生が指摘するように、本ポケゼミは4泊5日の日程では短すぎると判断された。
 最終日まで怪我や疾病もなく、整理整頓、レポート提出、閉講式のあと、26日13時に予定通り解散となった。
(2005年8月26日 作成)


− 実 習 の 様 子 −