少人数セミナー「フィールド実習“森は海の恋人”」(報告)
2006年 8月26日−31日

担当教員:フィールド科学教育研究センター 教 授 田中  克
                     教 授 竹内 典之


 今年度も8月下旬(8月26日〜31日)に、宮城県気仙沼市唐桑町の水山養殖場を中心にして、フィールド研社会連携教授畠山重篤氏(カキの森を慕う会代表)の全面的な協力のもとに表記のポケットセミナーが行われた。参加者は農学部5名、総合人間学部1名(男3、女3)の6名であった。天候にも恵まれ、以下のように、ほぼ予定通りの内容が実施された。
 第1日目は気仙沼湾から大川を通じて室根山に至る「森は海の恋人」運動のフィールドにおいて、海−川−森の不可分のつながりを畠山さんの説明を中心に学んだ。2日目は室根山頂付近に平成2年に植えられたミズナラとブナの森で毎木調査を実施した。3日目は舞根湾外の九九鳴き浜でウェットスーツを着用してスキンダイビングによる観察を行うとともに小型ソリネットを用いて海底にいる魚の採集を行い、湾奥部の砂泥域との比較を行った。4日目にはカキ養殖場周辺においてプランクトンネット採集を行い、顕微鏡モニターに映し出されるカキの餌となる植物プランクトンを見ながら、森と川の重要性・リアス式海岸の起源・日本や世界の河口域などについて講義を受けた。
 4日間のフィールド講義や実習を通じて参加した学生は、舞根湾の“天国のような”豊かな自然・汽水域の大切さ・海の森の存在・カキのCO2固定に果たす役割・森と海の不可分のつながりなどを体感するとともに、河口域の微少なプランクトンの存在から地球的課題への広がりや森と川と海のつながりは世界に通じる概念であることなどに思いを馳せた。
 畠山さんの講義内容は年々深みと広がりを見せ、確信とロマンに満ちたものに進化し、担当した2名の教員も改めて大きな刺激を受けた。今年の参加学生はそれぞれに大変個性的で畠山さんの話のスケールや舞根湾の素晴らしい自然に驚くとともに、疑問に感じた点などを積極的に質問していた。
 このポケットセミナーでは、毎年畠山寿子さん(奥さん)にも、自分の子供達を迎えるように大変お世話になっている。今年も30日の昼には、カキ・ホタテガイ・ムールガイ・サンマ・牛肉・野菜のバーベキューに加えてサンマの刺身と生ウニという超豪華な歓送迎会を開いていただいた。学生のレポートからは森−川−海のつながりは吹き飛び、バーベキューは最高であったとの印象のみが先行するのではないかと心配するほどであった。(実際には、各自最終日の夜にほとんど徹夜で書いたレポートにはものごとのいろいろなつながりの重要性に気づいたことやこの実習は一生の糧になるなどまとめられていた)。今回の実習には水山養殖場の畠山義人氏にも大変お世話になった。また、学生達は新たに文庫本として発刊予定の「森は海の恋人」とともに「リアスの海辺から」・「カキじいさんとシゲぼう」の3冊をサイン入りで寄贈してもらい、大変感激していた。


− 実 習 の 様 子 −