少人数セミナー「原生的な森林の働き」(報告)


担当教員:フィールド科学教育研究センター 講師 中島 皇

 今年度も5月、6月に1回ずつ北部キャンパスで、6月には1dayセミナーを上賀茂試験地で、7月に2泊3日の集中講義(合宿形式)セミナーを芦生研究林で行った。参加者は7名(男5、女2)(学部別:文1、教育1、農4、総人1)で、農学部の学生は全て森林科学科の学生であった。セミナーの目的は、フレッシュな新入生諸君にフィールド科学入門の前段階として、フィールド(森林)で自ら体験し、自然と人間の関わり方に興味を持ってもらうことである(ポケゼミシラバスP140参照)。

 5/18(木) 5限目。フィールド研の大会議室でガイダンス。ゼミの内容と今後の予定及び自己紹介。
 6/ 1(木) 5限目。北白川試験地にあるj.Pod(センターHPを参照)の教室で、涼しい風が通り抜ける中、森林の働きについてのセミナーを行った。森林についての研究を紹介し、各自の考え方を発表し合って、森林の働きをいろいろな面から討論した。
 6/25(日) 10:00に上賀茂試験地に集合し、試験地内を見学した。試験地には標本館をはじめ、世界各地から集められた生きた樹木のコレクションや遷移を続ける天然林などの教材がある。沢山の種類のマツや里山の天然林を見て回わった。見学後は、講義室で各自が持つ森林のイメージについてのセミナーを行った。また、7月の集中ゼミでの献立や買い出しの段取りを話し合った。
 7/15(土) 出町柳駅前10:00発の京都バス広河原行に乗車。全員無事に広河原のバス停に揃っていた。合流したTAの森下君(森林育成学D3)も一緒である。芦生到着後、各自持参の昼食をとり、運悪く降り出した雨の中を森下君の案内で、由良川本流沿いのトロッコ道を歩いて、芦生の標高の低い地域の代表的な樹木と川沿いの植生や地形を見学した。このセミナーでの食事はすべて自炊である。買い出してきた食材を使ってカレーが出来上がった。夜は、芦生研究林が抱える問題点や環境・自然保護についての議論を行った。
 7/16(日) 弁当を作って出発。内杉谷からケヤキ坂までは、林道沿いでアシウスギの台杉や数年前に雪で倒れた大きなミズナラの根などを見学し、幽仙谷集水域天然林研究区では大面積・長期プロットと暖温帯と冷温帯の境界について説明を受けた。残念なことに、杉尾峠に上がる頃にはポツポツと降り出した。由良川最源流は梅雨の雨の影響で十分水があり、かなりぬかるんでいた。霧に煙る栃の大木や苔生した倒木がそこここに見られる原生的な雰囲気を持つ森(但し、最近のシカによる食害のために下草がほとんどなくなっている)を楽しんだ。雨は本降り。昼食は雨の中立ったままで握り飯にかぶりつく者もいた。森(自然)の中では食事を取るのも能力の一つである。この日は芦生の標高の高い地域の代表的な樹木や植生と準平原状の地形を時間をかけて見学した。雨具を着けずに濡れたまま、長治谷からは量水堰、大桂、二次林と人工林を観察しながら下山した。幽仙谷では天然林からの流出木の調査を行い、ちぎ(竿ばかり)とメジャーを用いて、流出木の大きさと重量を測定した。今夜は焼肉である。雨に打たれて疲れた体も、風呂へ入って旨いものが口に入ればすぐに復活する。若さの特権である。夕食後に行われた森下君の研究紹介は、博士課程の大学院生の研究に触れられたようで、なかなか好評であった。
 7/17(月) 最終日は調査データの整理・解析の実習。昨日計測した流出木のサイズや重量を整理し、レポートとしてまとめた。宿舎・食堂の片付けと感想文及びフィールド科学教育研究センターからのアンケートを書いてセミナーは終了となり、芦生研究林の車で広河原バス停まで送ってもらって、京都への帰路についた。感想文には、原生的な森林を自分の足で歩き、色々な植物や動物に触れられた率直な気持ちが表現されていた。