平成19年度 少人数セミナー 「豊かな森をめざして!」  報告



講師:フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門
森林環境情報学分野 准教授 芝 正己



 2007年度新入生向け少人数セミナー(ポケゼミ) "豊かな森をめざして!: The Way to a Richer Forest"の科目名で開講した本ゼミは、4月中旬のガイダンスからスタートし、本部での5回の講義(毎火曜日5限目:講義の合間にフィールド研関連施設の見学を含む)と1泊2日の芦生研究林での野外体験実習を行った。今回の受講生は、医学部(1名)、工学部(1名)、農学部(4名)、法学部(1名)、経済学部(2名)、総合人間学部(1名)の10名(男性6名、女性4名)であった。
 本講義の目的は、地球規模で問題となっている世界の森林の状況、日本での森林の保全・利用の現状を対比させながら、環境-経済-社会面からみた森林資源管理のあるべき姿を分野の異なる受講生全員で模索議論することである。21世紀に向けて森林を持続的に管理し、その多面的な機能を発揮させるためには、従来の専門領域に止まることなく、異分野間の連携を図ることが必要であり、そのためにも、隣接する領域やこれまで無関係だと考えられてきた分野についての正確な知識の習得が求められている。その具現化として「森里海の連環」を教示しつつ、以下の内容構成で解説した。

 講 義
 [ 講義内容の構成 ]
 1:世界の森林とその特徴−諸外国の紹介(特に、東南アジアの熱帯雨林と極東北方林の現状)
 2:日本の森林・林業の現状(人工林管理、特に間伐問題や生産環境整備)
 3:森林の利用と保全のバランス(森林の機能区分と情報管理)
 4:新たな森林の管理−豊かな森へ(持続可能な森林管理- 森林認証とCoC)
 5:総括と討論(森林管理から森里海連環管理へ)

 野外体験実習
 7月5日(木)〜7日(土)の1泊2日の日程で実施した芦生研究林での野外体験実習(参加者9名:受講生8名、TA1名)の概要は以下の通りである。
 初日は、昼過ぎにJR園部駅西口に集合、研究林のマイクロバスで「園部・日吉:郊外の土地利用や森林風景」、「美山町:由良川沿いの景観と土地利用、茅葺きの里」等を順次見学しながら研究林までのほぼ1時間半のコースを移動した。
 翌6日は、芦生研究林の技術職員の支援を得て、内杉谷から長冶谷までのコースを移動しながら、「暖温帯林から冷温帯林への森林の変化」、「シカの食害地やクマ剥ぎ木」、「カシノナガキクムシ被害木」、「渓畔林の植生」等を観察した。さらに、由良川本流に沿ったトロッコ軌道敷を樹木識別行いながら、灰野集落地跡まで散策した。最終日の7日は、後片付け、レポート作成後、初日の逆コースを経てJR園部駅で解散した。今回の芦生実習には、大学院生1名がTAとして参加したが、初めて訪れた受講生に対して施設の利用法や食事の準備等きめ細かに教示補助してくれた。わずかな芦生での滞在であったが、フィールドでしか得られない何かを全員が感じ取ってくれたような気がする。彼らのこれからの学生生活に期待したい。
 今回の実習を通して、1.予備知識としての事前講義、2.参加者数と宿泊施設、3.送迎移動や実習支援等の問題点が明らかとなった。