平成19年度 ポケットゼミ 報告
タイトル:河口域の生態学 前期集中

京都大学フィールド科学教育研究センター
山下 洋


受講生は法学部1名、医学部1名、農学部3名の計6名であった。集中講義型としてポケゼミを開校したが、実習のほかに4月、6月、7月に河口域の生態学に関係する講義を行った。
内容としては、フィールド研の紹介に始まり河口域の構造、通し回遊生物の生態、河口域における生物生産構造、沿岸海洋域における生物生産構造、森・里・川・海のつながりとフィールド研の森里海連環学について、などである。
6月29日〜7月1日にかけて、由良川河口域で実習を行った。6月30日には舞鶴水産実験所の甲斐助教にも手伝ってもらい、由良川の支流から本流河口域を見学し、河口において稚魚調査を行った。稚魚採集では、稚魚用地曳網および口径1mのソリネットを河口域から神埼浜において曳網し、ヒラメ、ボラ、スズキ、ウグイ、ヒイラギ、イシガレイ、マコガレイ、ヒメハゼの8種が採集された。
昨年と比較すると、後半の4種は昨年採集されていない。総種類数は昨年、今年とも8種であり、採集時期はほぼ同じであったが、昨年とはかなり異なる種組成となった。また、スズキ稚魚のサイズが昨年よりもかなり大型であったことが注目される。7月1日は舞鶴魚市場に出かけ、水揚げされた魚介類の見学と若狭湾の漁業に関する解説を行った。
京都府の北部を流れる由良川は、京都大学芦生研究林を源流とし若狭湾の西部(丹後海)に注ぐ。本実習では、由良川源流域を中心とした芦生研究林内の森林構造の観察、由良川に沿って上流域から和知、綾部、福知山を経由して河口域までの水質調査、魚類や水生昆虫などの水生生物調査、土地利用様式の調査を行う。
森林域、里域、農地、都市などの陸域の環境が、由良川の水質、生物多様性、沿岸海域の生物環境にどのような影響を与えているかを分析し、森から海までの流域を生態系の複合ユニットとして捉える視点を育成する。



− 実 習 の 様 子 −

由良川河口 神崎浜