少人数セミナー(ポケット・ゼミ)「環境の評価」報告書 2008年7月

講師:フィールド科学教育研究センター 教授 森林資源管理学分野 吉岡 崇仁


 A・B群のセミナーとして開講し、自然環境を評価することの意味について、自然科学的、社会科学的側面から解説と討論の形式で実施した。受講生は、工学部6名、経済学部2名、理学部1名の合計9名であった。
 「環境を評価する」とはいったいどういうことかという点について、環境の持つさまざまな価値を人間が認識し、自らの態度や行動を決定する際には、その環境の価値を判断している、という枠組み設定(図参照)に基づいて議論を進めた。
環境の価値については、利用価値・非利用価値の整理を行い、それらが人間中心主義・非人間中心主義的な環境の捉え方とどのような関係にあるか、また、環境倫理学の構造についても考察した。また、受講生が環境保護や環境問題を考えるに当たって、人間中心主義的立場に立つか非人間中心主義的立場に立つかを明示させ、その立場に立つ理由や具体的な環境問題への関わり方についてそれぞれの考えを発表した。経済学者アマルティア・センが貧困問題解決のために提唱した潜在能力アプローチを環境問題解決の文脈で応用することの可能性や問題点に関して、希望した経済学部生2名と工学部生1名に課題として与え、その内容を全員で吟味、考察した。さらに、環境の評価として近年重要視されている環境影響評価、戦略的環境評価の仕組みについても考察した。
 文と理が融合した概念的な議論が多く、内容的にかなり難しいゼミとなったが、環境への接し方、環境問題の捉え方などについて、今までにない側面から自らの考えを明確にできたという点は、受講生に評価してもらえたようである。
 計画では、環境を研究している機関を訪問してさらに議論を深める予定であったが、時間の関係で実施できなかった。討議の内容も含めて、来年度に改良を加えることにする。



少人数セミナーの様子