平成19年度 森里海連環学実習A 報告
(芦生研究林−由良川−丹後海コース)

京都大学フィールド科学教育研究センター
山下 洋・芝 正己・益田 玲爾・
西村 和雄・上野 正博・中西 麻美・甲斐 嘉晃
京都大学農学研究科
西田 隆義

1.目的
京都府の北部を流れる由良川は、京都大学芦生研究林を源流とし若狭湾の西部(丹後海)に注ぐ。本実習では、由良川源流域を中心とした芦生研究林内の森林構造の観察、由良川に沿って上流域から和知、綾部、福知山を経由して河口域までの水質調査、魚類や水生昆虫などの水生生物調査、土地利用様式の調査を行う。森林域、里域、農地、都市などの陸域の環境が、由良川の水質、生物多様性、沿岸海域の生物環境にどのような影響を与えているかを分析し、森から海までの流域を生態系の複合ユニットとして捉える視点を育成する。

2.参加者
学生10名(総合人間学部1、医学部1、理学部2、農学部6名)
京都府立海洋高校教員3名(研修)
担当教員は上記の通り、担当技術職員10名、担当大学院生4名

3.実施状況
8月6日(月)
実習に参加する学生は午前中に京大農学部から芦生研究林へ移動。12:30〜17:30に研究林を観察した。行程は、杉尾峠−長治谷−下谷である。森林内の樹木構成、下層植生を観察するとともに、立木密度、樹木直径、樹高などの測定を実習した。また、シカによる食害の深刻さを観察した。さらに、由良川の源流から上流域の水質、水生生物調査を行った。
8月7日(火)
1日かけて由良川上流、中流域の水質と水生生物調査を行った。調査点は、研究林入り口、かやぶきの里、大野ダム、和知、綾部白瀬橋である。また、実習拠点を芦生研究林から舞鶴水産実験所に移動した。
8月8日(水)
午前中大江山において、森林内の樹木構成、下層植生を観察するとともに、立木密度、樹木直径、樹高などの測定を実習した。また、芦生研究林との比較を行った。午後は、由良川下流となる二箇および河口の神埼において水質と水生生物調査を行った。
8月9日(木)
舞鶴水産実験所において、水質分析、魚介類同定、水生昆虫同定作業を行った。午後以降、並行してデータ解析、とりまとめ、レポート作成を行った。測定した水質は、水温、塩分、電気伝導度、酸化還元電位、溶存酸素、pH、COD、硝酸態窒素、アンモニア態窒素、SSと顕微鏡による組成の観察である。また、魚類32種、その他エビ類や水生昆虫は100をこえる分類群が採集された。これらの結果を調査点ごとに分析し、環境の変化と動物相の変化との関係や生物多様性を解析した。
8月10日
班ごとに実習結果をパワーポイントにまとめ、報告会を行った。班ごとに特色のある解析結果が報告された。また後日、全データ、パワーポイントファイル、写真等をまとめたCDを参加者に配布した。

かなり忙しい日程であったが、由良川の源流部から河口まで自然環境の変化をつぶさに観察し、水質分析結果と生物多様性の分析から人間活動の影響を科学的に見ることができた。山に登り川に入って水質を測定し生物を採集した経験が、参加した様々な学部の実習生にとって、地球環境問題などをより身近に考えるうえで役立つことを期待している。



− 実 習 の 様 子 −

芝准教授による講義 由良川上流域での水質・水生生物調査
大江山での森林調査 由良川下流域での水質・水生生物調査