リレー講義 『森里海連環学』

講師:フィールド科学教育研究センター 教授 山下 洋


 平成16年度から、全学共通科目としてリレー講義形式による『森里海連環学』を開講した。フィールド科学教育研究センターが提供する全学共通科目としては、平成15年度から開始した『森里海連環学実習』があるが、『森里海連環学』は講義として開講する最初の科目となる。講師陣にはフィールド研の教員だけでなく、関連分野において学内外でご活躍中の先生方にも参加して頂いた。理系、文系を問わず1回生から4回生までの全学生を対象に定員80名の予定で、平成16年度後期の金曜日3限目に開講したが、初回から立ち見の学生が大量に出たため、場所をより大きな教室へ変更した。136名の学生が履修登録を行い、最終回までコンスタントに90名前後の学生が出席し大変好評であった。また、法学部や文学部など文科系の学生が約半分を占めたことが特徴的であった。17年度からは、本科目と連結する形で、新たにリレー講義『海域・陸域統合管理論』を開講予定である。 『森里海連環学』の目的と講義の構成は以下の通りである。
 わが国の自然環境は、森林生態系、沿岸海洋生態系およびその間に位置し人間活動の影響を強く受ける里域生態系により構成されており、これらは相互に不可分に連環している。これまで、生態系は個々のユニットごとに研究されてきたが、圧倒的な人間活動のインパクトは、個々の生態系の枠組みを超えて生態系間の循環に大きな影響を与えており、人類の生存のためには、複合的な自然生態系と人類との共存システムの解明が不可欠である。本科目は、リレー講義を通して学生とともに考え論議することにより、森と里と海の生態系間の連環機構を理解するための「森里海連環学」という新しい学問領域を創生しようという試みである。

1.構成
 (1) 10/ 1 森の生態 ― 竹内典之(フィールド研教授)
 (2) 10/ 8 里はなんのためにある?森か?海のためか? ― 西村和雄(フィールド研講師)
 (3) 10/15 里の生態 里山 ― 柴田昌三(フィールド研助教授)
 (4) 10/22 河口域の生態 ― 田中 克(フィールド研教授)
 (5) 10/29 河口域の物質循環 − 川と海の出会うところ− 藤原建紀(農学研究科教授)
 (6) 11/ 5 沿岸海洋域の生態 ― 白山義久(フィールド研教授)
 (7) 11/12 森の恵みと海の恵み ― 畠山重篤(牡蠣の森を慕う会代表)
 (8) 11/19 森里海間の物質循環 水と土砂 ― 中島 皇(フィールド研講師)
 (9) 11/26 森里海間の物質循環 栄養塩 ― 徳地直子(フィールド研助教授)
 (10) 12/ 3 森里海間の物質循環 ミネラル成分 − 中野孝教(地球研教授)
 (11) 12/10 生態系サービスと管理からみた森里海の連環 − 浅野耕太(環境学堂助教授)
 (12) 12/17 里海の生態と保全 − 山下 洋(フィールド研教授)
 (13) 1/21 流域環境における人間・自然相互作用系の研究 − 吉岡崇仁(地球研助教授)

フィールド研:京都大学フィールド科学教育研究センター
農学研究科:京都大学大学院農学研究科
環境学堂:京都大学大学院地球環境学堂
地球研:総合地球環境学研究所


− 講 義 の 様 子 −