ポケゼミ報告2013「北海道の森林」

森林情報学分野 准教授 舘野 隆之輔

 北海道研究林を使った少人数セミナー「北海道の森林」を8月4日から8日にかけての4泊5日で行った。今年で2回目の開講となる。10名の募集に対して、参加学生は、法学部1名、経済学部3名、工学部3名、農学部2名の計9名であった(1名はガイダンス後に参加辞退)。北海道研究林職員8名とTAとして森林情報学分野院生1名が指導の補助を行った。
 本セミナーは、北海道の森林・湿原の生態系や人と自然の関わりについて森林調査や森林作業などの野外体験を通して理解を深めることを目的として行った。セミナーでは、緯度や標高の傾度に対する植生の変化、林床の光環境と下層植生の関係、湿地や火山ガスなど特殊な環境傾度に対する植生の変化、間伐前後の光環境の変化など、植生と様々な環境条件との関係について学んだ。
 集合時間までに京都から集合場所である標茶駅まで移動してもらうこととしていたが、学生たちは4月のガイダンス時に連絡先を交換しあって、全員で一緒にフェリー・高速バス・JRを乗り継いで標茶までやってきた。当日の気温は北海道としてはやや暑い日であったが、猛暑の続く京都からやってきた学生にとっては、本州と北海道の自然環境の違いを実感したことであろう。その後、北海道研究林においてガイダンスや植生に関する講義、切り枝を使った樹木識別実習を行った。2日目は、研究林内で実際に山に生えた樹木で樹木識別実習を行った後に、様々な植生タイプ(ミズナラ天然林、カラマツ人工林、トドマツ人工林、ササ原)において、光環境の測定と下層植生の刈取り調査を行った。3日目は、屈斜路湖の北に位置する藻琴山(標高1000m)の登山を行い、北海道における森林限界付近の植生を見学し、標高に沿った植生の変化について学んだ。その後、川湯硫黄山付近の火山ガス噴出孔からの距離に応じた植生の変化について、川湯エコミュージアムセンター裏のアカエゾマツ天然林からつつじヶ原自然探勝路沿いを硫黄山麓まで歩いて見学した。4日目は、北海道研究林内のアカエゾマツ人工林において間伐体験を行った。間伐の前後には、2日目と同様の調査を行い間伐によって林内光環境がどのように変化するか、また間伐によってどのように下層植生が変化していくかについて考察した。生まれて初めて触るチェーンソーにどきどきしながらも、一人2~3本の立木を伐倒し、各班1列分の伐倒作業を終えることが出来た。今年は玉切りした丸太を手で運んで積み上げる作業も体験してもらった。最終日は、塘路湖エコミュージアムセンターと細岡展望台を訪問し、湿地の植生について学び、釧路駅にて解散となった。今年度も様々な学部からの参加となったが、普段はあまり気に留めない森林について色々と学び、京都ではなかなか体験できない大自然でのセミナーを体験出来て、受講生は皆、満足して真夏の京都へと帰って行った。