ポケゼミ報告2013「海産無脊椎動物-分類群と形の多様性」

基礎海洋生物学分野 講師 宮﨑 勝己

 このポケゼミは、海産無脊椎動物の種類(すなわち分類群)や形態の多様性について、事前学習と実物の採集・観察を通じ理解を深めていく事を目的として行うもので、京都での2回の講義と、瀬戸臨海実験所での実習とで構成される。今年度の受講学生の内訳は、理学部、農学部、医学部、薬学部、総合人間学部、経済学部からそれぞれ1名ずつで、男女比はちょうど半々であった。
 2回の講義は、いずれもフィールド研会議室にて放課後に行った。4月15日に行った第1回目の講義では、オリエンテーションとして各自の自己紹介とポケゼミ全体の概要説明を行い、志望動機や連絡先などを記入・提出させた。また、ある海洋生物学の教科書(英語)から海岸動物の採集と保全に関する章を抜き出し、その和訳を宿題として課した。5月16日に行った2回目の講義では、海の動物の多様性に関する概説的な講義を行った後、前回課した宿題を回収した。
 実習は前年度までは夏季休業期間中に行っていたが、臨海実習数の増加などによりこの期間中の実習開催が難しくなってきたため、今回は海の日の祝日を利用して、7月12日から15日の3泊4日の日程で行った。この日程は、従来より1日短くなっている。受講学生6名のうち1名は2回目の講義から欠席し、実習も不参加であった。実習初日は平日(金曜日)のため5限目の講義を受講してからの移動となり、全員が白浜駅着最終の特急で到着した。駅から車で実験所に移動し、その日は簡単なオリエンテーションのみ行った。2日目は所内案内に引き続き、午前中に水族館展示生物の調査、実験所裏の北浜での砂及びフジツボ採取を、午後に実験所周辺の番所崎での磯採集と採集物の同定作業を行った。また夜には、同定作業と並行しながら、採集物の中から走査電顕観察用の試料を選定し、観察のための試料作りを始めた。3日目は前日採取した砂やフジツボ等を洗い出し、そこから抽出されたメイオベントス等の微小動物の観察・同定を行った。それと並行して走査電顕観察用の試料を完成させ、順次電子顕微鏡による観察と写真撮影を行った。また同定結果については、全員でデータをとりまとめさせ、考察を添えたレポートの作成を進めさせた。夕食までに全ての観察・同定作業を終えることが出来、この日の夜は実験所宿泊棟食堂にて、ささやかな反省会を行った。最終日の朝に宿泊棟及び実習使用スペースの片付けと掃除を行い、レポートの提出をもって終了とした。レポート提出から帰路につくまでの時間に、希望者のみでのエクスカーションを敢行したが、結局これには全員が参加し、白浜町内のいくつかの観光スポットと温泉とを案内した。
 今回は実習日程を従来より1日短縮したが、結果として従来とほぼ同じ内容を消化することが出来、観察出来た動物門及び動物種の数も例年とほぼ同数となり、教員・学生ともほぼ満足いくものとすることが出来た。一方で、2日目の夜は相当遅くまで作業する事になってしまい、今後は各種作業をより効率的に進めさせる工夫が必要であろう。また実習中の説明や案内の時間が減少する分、京都での講義内容をより充実させることも必要であると感じた。いずれにしても、前述したように夏季休業期間中の実習開催は出来ない状態にあるので、来年度からも7月中の祝日に伴う連休期間での実習開催を行う予定である。