ポケゼミ報告2013「原生的な森林の働き」

森林情報学分野 講師 中島 皇


 今年度も5月・6月と多くの予定が入ったため、昨年同様に1コマセミナーを4月からスタートした。2回目は5月中旬に北白川試験地にあるj.Podで行った。6/1(土)には都市近郊林と見本林の見学のために上賀茂試験地で1dayセミナーを、そして最終の仕上げに芦生研究林で合宿形式セミナー(2泊3日)を6月末に実施した。参加者は6名(全員男)、学部別は(理1、農4、総人1)、出身地は浦安市、前橋市、群馬県邑楽郡板倉町、川西市、豊中市、高岡市と半数が関東の出身者であった。また、多くが都会育ちで、「本当の自然」に触れた経験が少ないようである。フィールド(森林)に出て、自ら体験し、考え、自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのセミナーの目的であるが、「自然とは何ぞや?」をじっくり考えることも大切なことなのかもしれない。
 6/28(金):芦生での集中セミナーは京都市左京区の北端に近い広河原バス停集合で始まる。芦生研究林からの迎えの車で佐々里峠を越えて由良川の集水域に入り、30分程で芦生に。昼食をとり、身支度を整えて事務所構内を見学の後、由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながら、集落があった灰野までトロッコ道をのんびり歩いた。夕食は調査隊も合流してにぎやかにすき焼き。自分の「始末」は自分ですることも、このゼミの重要な要素である。夜は、芦生研究林の概要と抱える問題点等の説明を受け、それについて話し合った。
 6/29(土):天気は良い。昼食のにぎり飯を作って出発した。幽仙谷の大面積・長期プロットや暖温帯と冷温帯の移行帯についての説明を受けながら、事務所より400m程高い丹波高地にある杉尾峠へ。この地域の古い呼び名で「峠」はピークのことを指すそうだが、本来はピークのすぐ近くの鞍部もまとめての名前なのであろう。付近からは日本海(若狭湾)も見える。上谷の由良川最源流を長治谷まで、約2時間半かけて歩いて下る。ツルにぶら下がったり、トチの大木にある洞に入ったり、ブナの倒木の橋を渡ったりと、原生的な森林を満喫したようである。何でも誰かがやってくれてしまう現代社会を、かつて木地師たちが住み、鹿の激増による林床植生の激減している状況の人為や人間の影響?も見られる原生的な森林を基準に考えてくれれば、このゼミを開講している意味がある。長治谷に到着後、上谷・下谷の量水堰の近くで流量観測を試みた。その後、下谷では大桂、二次林と人工林を観察し、幽仙谷では天然林からの流出物を回収した。夕食はカレー。皆、腹一杯食べて満足の様子。食後はTAの大学院生や研究員である先輩たちの研究紹介を眠気と戦いながらも聞き、質問をしていた。
 6/30(日) 流量観測データをレポートにまとめ、回収してきた流出物と水生昆虫の観察とデッサン。最後に宿舎・食堂の片付けとアンケートに答えて、広河原バス停までの送りで、セミナーは終了となった。感想文にはそれぞれに芦生の森に触れられた満足感が表現されていた。