実習報告2013「生物学実習 II [海洋生物学コース]」

基礎海洋生物学分野 教授 朝倉 彰

 この全学共通科目は,従来総合人間学部の教員が担当していたものを,昨年度より瀬戸臨海実験所で引き継ぐ形で開講している臨海実習である。今年度は後期集中講義として,2014年3月25~30日の5泊6日の日程で瀬戸臨海実験所を舞台に行った。なおこの実習は,他大学向けの公開臨海実習「海産無脊椎動物多様性実習」と同期間に設定し,合同で行っている。
 瀬戸臨海実験所がある紀伊半島南西部のいわゆる南紀地方の海は,黒潮の影響と複雑な海洋地形が相まって,そこに生息する海洋生物の多様性は非常に高い。この実習は,そこに生息する海産無脊椎動物が示す分類群や形の多様性について理解を深め,海洋生物学の基礎を実地を通して学ぶことを目的としている。具体的には,磯採集・干潟採集・プランクトンネット採集・採泥器採集・イセエビ刺し網漁獲物採集と様々な採集を実際に試み,マクロベントス・メイオベントス・プランクトンを中心とした多種多様な海産無脊椎動物の観察と,図鑑等を使った同定作業とを行った。また今回は,初日の夜に実験所で開催された第37回瀬戸海洋生物学セミナーにも参加し,本郷宙軌琉球大学理学部特別研究員による講演「サンゴ礁生態系の過去・現在・未来」を聴講した。
 10月に行ったガイダンスには,定員10名のところ14名の受講希望者が来たが,参加キャンセルを見越して全員登録を認めた。ところが同じく定員の10名を超える受講希望が寄せられた公開臨海実習とも,ほとんどキャンセルが出ず,最終的に両方合わせて23名が参加した。これは採集で使う船舶や移動に使う車の定員を考えると,いわゆるオーバーブッキング状態にあたり,そのため船舶への乗船を2回に分けるなどの対応を迫られることとなった。また実習途中で,数人の体調不良者が出たが,実習日程がやや過密であったことや,学生数の多さから十分に目が行き届かなかったことがその原因となってしまったのかもしれない。これらの点については,次回以降改善を図りたいと思う。
 全学共通科目ということで,学部や学年にばらつきがあり,公開臨海実習参加者も含めた全参加者をいかに満足させる内容とするかに各教員とも苦慮したが,実習後のアンケートやレポートの内容を見る限り,このことはかなりの程度実現出来た様子である。また公開臨海実習で参加した他大学生とも,有意義な交流が随所で図られていた。
 瀬戸臨海実験所で担当するようになってまだ間もないこともあり,問題点も散見されたが,これから更に工夫や改善を重ねることで,全学共通科目としてより良い実習となるよう努めたいと思う。