ポケゼミ報告2015「環境の評価」

森林情報学分野 教授 吉岡 崇仁


 このゼミは、自然環境を評価することの意味について、自然科学的、社会科学的側面から考えることを目的としている。教室では、講義形式で環境評価に関わる概念、環境哲学や倫理学に関する考察を、そしてフィールド科学教育研究センターの徳山試験地では合宿を実施した。受講生は、文学部・法学部・経済学部・理学部各1名と工学部3名の計7名であったが、農学研究科森林科学専攻の修士1年もゼミでの討論に参加したことから、幅広い学術分野にわたる議論ができた。例年にまして、活発な議論ができたが、修士院生の積極的な発言がきっかけとなったものが多かった。
 講義室(フィールド研第1会議室)では、6回に渡って環境の価値や環境意識などについて討論を行い、環境を評価する意味について意見交換を行った。また、最終レポート作成の予習として、新聞に掲載された環境関連の話題について、その要約、環境評価に関する記載、その記事内容に関する自らの考えなどを披露し、全員で議論することで、理解を深めた。フィールド合宿は、いままで芦生研究林で実施していたが、平成27年度は山口県にある徳山試験地で行った。森林の見学だけではなく、檜皮(ひわだ)生産のために維持されているヒノキ人工林の整備作業を体験した。事務所において、徳山試験地の歴史や文化庁から「ふるさと文化財の森」に指定されていることの意義について解説をうけたあと、樹木同定のやり方について概要を学んだ。試験地内での実習では、時間の都合で樹木同定実習はできなかったが、ヒノキ人工林の林床植生の刈り取り作業を行った。酷暑のなか、未経験者ばかりであったため、整備された面積は小さいものの、その場所のヒノキ人工林は見違えるようにきれいになり、受講生は満足げであった。夜は、全員で夕食の準備をしたが、講義室でのゼミでお互いのことがよく分かっていたためか、役割分担しながら手際よく調理していたことが印象に残った。翌日、最終レポートを各自で発表し、全員で討議を加えた。内容は、太陽光発電・地熱発電や炭素税、ハイブリッドカーといった地球温暖化に関するものが多かったが、ロシアのサケ漁規制や沖縄の基地問題といった国際問題、さらには、二条城での樹木伐採など、幅広い課題が取り上げられ、それぞれ活発な意見交換があった。討論の結果を踏まえてレポートを完成し、提出したあと、周南市の西緑地「万葉の森」を訪れ、オオガハスの花や外国産樹種などを見学した。
 フィールド合宿では、徳山試験地の境技術班長、秋田技術職員にお世話になりました。お礼申し上げます。