長谷川尚史『林業イノベーション』

2016年2月25日、長谷川尚史准教授が執筆された『林業イノベーション : 林業と社会の豊かな関係を目指して』(全国林業改良普及協会 林業改良普及双書No.183)が出版されました。

詳しくは出版社の紹介ページをご覧下さい。

(ニュースレターNo.39原稿)
 「イノベーション」は「技術革新」と訳されることが多い経済学用語で、環境保全とはかけ離れた言葉に思えるかもしれません。しかしこの言葉は100年以上前に経済学者シュンペーターが景気変動を説明するために編み出した概念で、単なる技術論にとどまらない新しい社会構築手法にまで及ぶ考え方です。
 林業の低迷に伴い、管理不足となり環境に悪影響を与えつつある人工林資源ですが、一方でこの50年間で6倍近くの蓄積を有するまで成長しています。これはイノベーションの条件の一つである「原材料の新しい供給源」と捉えることもできます。うまく活用できれば、国土の2/3が森林である日本を森里海の連環が確立した社会構造に変革する機会にもなり得るのです。本書では、林業機械やリモートセンシングなどの技術の発達や、林業への IJU ターン者の就業など、日本で芽生えつつある林業におけるイノベーションの動きを紹介するとともに、これからの持続的森林管理について幅広く検討を行っています。 (長谷川 尚史)

ニュースレター39号 2016年07月

(以下、出版社によるチラシより)

いま見えてきた変革の種
―「日本林業の未来」を決定づける大きなチャンスが

私たちは、林業の各分野に見えてきたイノベーションの種に気づいているだろうか。技術、システム・流通・販売は? 何を造る林業を目指すのか? 精緻データ、分析ツール、地域適合型の精密林業とは? 組織の重要性、経営理念とES、CS、多様な人材に存在するイノベーションの種。そして、将来社会での林業の存在意義̶̶どんな地域社会・人々の暮らしを実現していくのか。日本林業のイノベーションの方向性と効果を分析し、整理した、著者渾身の書き下ろし。

主要目次
第1章 はじめに~森林・林業の現状と課題
第2章 イノベーションとは何か
第3章 日本の森林管理の歴史
第4章 生態系サービスと将来社会における林業の存在意義
第5章 日本林業のイノベーションの方向性
第6章 森林生産システムからイノベーションを考える
第7章 イノベーションのための人材育成と組織づくり
第8章 おわりに~豊かな森へ

本書に登場するキーワード
経営イノベーション、技術イノベーション、人材イノベーション
・生産目標とリスクマメジメントの関係
・生産システムのイノベーション分野
・作業システム発展の方向性とは
・森林データと分析ツールの技術革新
・精密林業的アプローチ―林地の特性に極限まで合わせる手法
・面的な管理単位の概念を覆す可能性
・「在庫管理技術」とサプライチェーン構築の方法
・イノベーションのキーパーソンとは
・イノベーションを生む組織とは
・総合満足度、組織への愛着、経営方針への共感度
・持続的イノベーションを生み出すもの
・地域の資産運用、コンサルタント、プロフェッショナル育成
・林業をベースに社会構造を変革していくチャンス