ポケゼミ報告2015「原生的な森林の働き」

森林情報学分野 講師 中島 皇


 今年度は5月に外国出張の予定があることから例年になく早い時期に初回(4/20(月))を実施した。2回目は帰国後の5月下旬に北白川試験地のj-podで。6/6(土)には都市近郊林と見本林の見学に上賀茂試験地へ1dayゼミ。最終が芦生研究林で6月末に行われる合宿形式ゼミ(2泊3日)である。定員8名(男7、女1)の申し込みがあり、一人もキャンセルはなかった。学部別は法1(女)、理1、工3,農3、出身地は名古屋市、古河市、枚方市、姫路市、福岡市、あわら市、愛知県蟹江町、東温市、福岡市であった。今年のメンバーは早々に打ち解けて、TA(M1男女各1名:森林育成学研究室)とも密に連絡をとり、準備していた。フィールド(森林)に出て、自ら体験し、考え、自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのゼミの目的である。
 6/26(金):集中ゼミは京都市左京区の北端広河原バス停集合で始まる。芦生研究林からの車で佐々里峠を越えて30分程で芦生に到着。昼食後、身支度を整えて出発しようとするがやや強い雨。由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながら、トロッコ道を歩く。夕食は何故かネットで仕入れたチーズフォンデューと水炊き。夜は、芦生研究林の概要と抱える問題点等の説明受け、芦生の現状について理解を深めた。
 6/27(土):空一面の雲から雨が来るか。内杉谷にある台杉や雪崩道、幽仙谷(大面積・長期プロット)などの説明を受け、幽仙の土場では気象観測担当の技術職員に雨量計の構造を見せてもらった。事務所より400m程高い丹波高地の稜線にある林道では雲が近く感じられる。福井県境にある杉尾峠付近からは日本海(若狭湾)も見える。上谷の由良川最源流を出発。昼食の頃には遂に降り出した。かつて木地師たちが住み、鹿の激増によって林床植生の激減している(人為や人間の影響もある?)原生的な森林を基準に、何でも誰かがやってくれてしまう現代社会を考えてくれれば、このゼミを開講している意味があると考えているのだが、その意図は読み取って貰えたであろうか。約2時間半歩いて長治谷へ。雨が強くなって来たため、樹木の計測は事務所構内で行うことにして、量水堰、下谷の大桂、二次林と人工林を観察しながら下山。小雨の中、技術職員の指導で樹木の計測が実施された。雨の中、慣れない山道を歩いて相当疲れたようではあるが、若さでカバーして夕食の定番カレーライスに今年はハヤシライスまで作っていた。食後はTAの大学院生である先輩の研究紹介があり、参加者との質疑応答は受講生にとってもTAである院生にとっても意味があるようだ。
 6/28(日):昨日TAが回収してくれていた幽仙谷の流出物と水生昆虫の観察及びデッサンを行い、最後に宿舎・食堂の片付けとアンケートに答えて、広河原バス停までの送りで、セミナーは終了となった。芦生の森への思いがそれぞれ述べられた感想文は毎年読むのが楽しみである。