ILASセミナー報告2016「北海道の森林」

森林情報学分野 准教授 舘野 隆之輔

 北海道研究林を使った少人数セミナー「北海道の森林」を8月5日から8日にかけての3泊4日で行った。今年度からポケゼミからILASセミナーへと名称が変更して初めてのセミナーである。ポケゼミから数えて今年で5回目の開講である。10名の募集に対して、参加学生は、法学部1名、理学部2名、薬学部2名、工学部1名、農学部3名の計9名であった(1名は受講決定後に辞退)。今年度も受講者は抽選があったようである。また今年度から北海道研究林の教育関係共同利用拠点の採択に伴い公開森林実習2を開講することになりILASセミナーと同時開講し、名古屋大学からの参加者1名を加えて学生10名で実習を行った。担当教員1名に加えて、北海道研究林職員9名とTAの修士学生1名が指導の補助を行った。
 本セミナーは、北海道の森林・湿原の生態系や人と自然の関わりについて森林調査や森林作業などの野外体験を通して理解を深めることを目的として行っている。内容は昨年とほぼ同じ内容で、緯度や標高の傾度に対する植生の変化、林床の光環境と下層植生の関係、湿地や火山ガスなど特殊な環境傾度に対する植生の変化、間伐前後の光環境の変化など、特に植生と様々な環境条件との関係について学んだ。今年は、春先よりセミナー直前くらいまで曇りや雨の日が多く、例年になく涼しかったが、セミナー期間中は天候にも恵まれ、標茶にしては暑い日々が続いた。とはいえ、猛暑の続く京都からやってきた学生にとっては、涼しく感じられたのではないかと思う。
 到着した日は、ガイダンスや植生に関する講義、切り枝を使った樹木識別実習を行った。2日目は、北海道研究林内のアカエゾマツ人工林においてチェーンソーを用いた間伐体験を行った。例年通り、間伐の前後に林内光環境を測定と植生調査を行い、間伐が林内の光環境に与える影響について調べた。その後、前日の切り枝を使っての樹木実習に引き続き、野外に自生する樹木を対象に樹木識別の実習を行った。3日目は、皆伐跡地やカラマツ人工林、不成績造林地のササ原、ミズナラ天然林など様々な植生タイプにおいて、光環境の測定や植生調査を行った。最終日は、摩周湖・硫黄山を見学し、火山活動により出来た地形や植生を学んだ。昨年度は硫黄山の散策路がヒグマ出没の影響で閉鎖されていたが、今年度は無事に歩くことが出来た。その後、釧路湿原のオンネナイの木道を散策し、湿原の植生について学んだ。ちょうど湿原特有の珍しい植物であるタヌキモの花が咲いていた。その後、数名が釧路空港や釧路駅より帰路についた他は、そのまま標茶に戻って宿泊し、翌日の朝に帰路についた。例年は、セミナーの帰りにのんびりと北海道旅行を楽しんで帰る学生も多いが、今年は翌日のうちには北海道を離れて京都や実家へと帰っていったようである。