ポケゼミ報告2009「木造校舎を造る:木の文化再生へ」

里山資源保全学分野 柴田 昌三 教授


 少人数セミナー「木造校舎を造る:木の文化再生へ」は2009年度も例年通り10名の登録者を迎えて行われた。今回の登録者もすべて一回生であったが,その学部の内訳は,工学部7名,農学部2名,法学部1名(男子8名,女子2名)であった。実際に講義を受けに来た学生数は平均すると7名程度と,例年よりもやや少なかった。
 今年度の少人数セミナーを担当したのは,代表である柴田に加えて,フィールド研から芝正己准教授と田中克名誉教授,地球環境学堂から小林正己教授と小林広英助教である。田中名誉教授からは本セミナーの根幹的な発想となる森里海連環に関する講義を,マレーシア・サバ大学における研究生活の合間を縫ってお願いした。地球環境学堂の両小林教員からは,京都大学が知的財産権を有し,耐震性に優れた木造構造物である京大フレーム工法に関する講義等をいただいた。芝准教授及び柴田は,日本の森林に関する総論的な知識を伝えたほか,木質資源を供給する人工林や里山等の現状を紹介した。
 学内における講義はすべて,京大フレーム工法によって京大キャンパスに最初に建てられた,実験的構造物である建物において行われた。これらの講義に加えて,二回の学外での実習も行われた。芝准教授による京都府立植物園見学と,柴田によるフィールド研上賀茂試験地における伐木・製材体験である。植物園においては木本を中心とするさまざまな植物種を学び,その高い多様性と豊富さを学ぶことを目的とした。学生たちは植物の豊富さを学ぶとともに,その中から有用な植物を学ぶこととなった。
 上賀茂試験地においては,試験地の技術職員の懇切丁寧な指導を受けながら,まず試験地内にあるヒノキを二本,自らの手でチェーンソーを用いて伐採した。折から雨が降り出す天候であったが,伐採は無事に終了した。伐採したヒノキを作業小屋に運んだあと,昨年の受講生が伐採し,乾燥させてあったヒノキ材を用いて,学生たちは製材を経験した。毎年同様の体験実習を継続することによって,前年度に伐採され充分に乾燥した木材が使用できるようになることはありがたいことである。製材後の木材をまな板に加工し,学生たちは自分たちの手でサンドペーパーを用いて表面を磨き上げ,仕上げた。これは彼らに持ち帰ってもらい,使ってもらうよう,お願いした。これらの見学及び体験実習は,従来の一コマの時間では行い得ないため,午後半日を用いて行わざるを得ない。そのため,過密な受講スケジュールを組んでいる学生たちの中には参加できない者もいた。このことは残念なことであるが,現状のカリキュラムのシステムの中では致し方のないことである。
 講義終了後の学生たちからのアンケート結果を見ると,木造建築のみを学ぶつもりで受けた講義が予想外に木材生産も含めた講義であったことを感謝し,実際に生産の場も体験することができたことを高く評価するものが多かった。