実習報告2016「博物館実習(館園実務):瀬戸臨海実験所」

基礎海洋生物学分野 助教 大和 茂之

 2016年の全学共通科目の博物館実習(館園実務)は、11月7日(月)から11日(金)までの日程で、瀬戸臨海実験所で実施された。参加者は、文学部と農学部1名ずつの2名であった。瀬戸臨海実験所では、これまでも他大学の学生向けに、学芸員資格修得のための博物館実習を、水族館で受け入れてきた。京都大学学生向けの実習としては、今回が初めての実施であった。
 京都大学の学生向けに実施するにあたって、従来の水族館に関する実習に加えて、自然博物館に関する講義(朝倉彰担当)と、動物分類学の研究標本(模式標本を含む)の取り扱いに関する実習(大和担当)を取り入れた。水族館の実習では、飼育担当の技術職員(加藤哲哉、原田桂太、山内洋紀)が担当した。
 水族館実習では、水族館における海洋生物の飼育・展示に関する作業全般を、実際に体験してもらった。項目としては、開館準備、閉館準備、動物への給餌、餌の調理、機械の点検、濾過槽の管理、展示生物の採集・同定、展示の模様替え、展示解説の作製などであり、朝の8時から夕方の5時まで、飼育担当の技術職員とまったく同じスケジュールで、作業を行った。この間に、白浜駅構内にある展示水槽の管理や、南部町の漁港への採集、釣りによる採集などで、野外に出ることもあった。かなり体を動かす作業が多いので、普段デスクワークを中心としている学生には、多少きつかったようであるが、充実した日程であったようである。
 最後の日には、瀬戸臨海実験所が所蔵する海産無脊椎動物の標本について、実習を行った。研究標本は、特定の日時と場所で採集されて、特定の研究者に研究された唯一のものであり、論文などの記述やデータの証拠となるものである。特に模式標本は、新種として発表されたときに、指定された標本であり、国際的にも保存が義務付けられている。このような標本を保存・管理することの意義について学んでもらうとともに、データベース化の作業の一端を体験してもらった。
 学生に出来るだけ多くのメニューを体験してもらうため、水族館の作業スケジュールをこの実習用に合わせている。また、手取り足取りの説明が必要なため、受け入れ定員が最大3名までとなっている。事前の準備なども大変ではあるが、京都大学の博物館施設の一つとして、今後も貢献していきたい。