リレー講義報告2016「森里海連環学II :森林学」

森林育成学分野 教授 德地 直子


  森林は我が国の国土の7割を占め,私たちの環境の主要な構成要素である。また,そのうちの4割は人工林であり,人間活動と森林の関係は非常に重要なものとなっている。この講義では,森林について,森林をとりまく社会情勢,林業の現状,森林の生態学的把握,森林の生み出す機能,森林をよりよく利用するための方策など,多方面から森林を解析し,総合的に森林に対する理解を深めることを目的としている。講義の形式は,森林を考える場合,自然科学の面のみならず,林業などを含んだ人間とのかかわりを考えることが欠かせず,多分野にわたるため,各分野の専門の教員によるリレー講義としている。本年度は,各講師によりテキストが作成され,講義資料として学生たちは事前に学習ができるように工夫された。
 講義では,まず,德地直子教授により日本の森林植生の特徴や日本の森林のかかえる問題が紹介された。中島皇講師からは森林と水・土(2回)の関係について述べられた。本年は,森林学会賞を受賞した神戸大学の石井弘明准教授に特別講義をお願いし,植物についての基礎的な講義をしていただいた。石井先生は学生との応答を重視したアクティブラーニングの形式でテンポよく講義を進められ,学生たちの応答もよく,理解が深まったようだった。次いで,中西麻美助教からは樹木の一次生産について,特にヒノキ林分における調査結果をもとに説明がなされた。次いで,伊勢武史准教授より,森林生態系の機能について紹介され,舘野隆之輔准教授と德地教授より,より応用的に森林管理と物質循環についての検討が加わった。さらに今後の森林と人間とのかかわりの上で,重要な森林政策について農学研究科森林・人間関係学の松下幸司准教授が講義されたのち,坂野上なお助教により木材の消費・流通システムが考察された。次いで,森林資源の利用について林業機械などを含め長谷川尚史准教授による講義があり(2回),最後に吉岡崇仁教授による森林を流域の中で位置付け,流域と環境に対する意識についての講義がなされ,専門の異なる複数の教員によるリレーの形式で,森林の持続可能な利用についての総合的な講義が行われた。