ILASセミナー報告2018「環境の評価」

森林情報学分野 教授 吉岡 崇仁




 このゼミは、自然環境を評価することの意味について、自然科学的、社会科学的側面から考えることを目的としている。教室では、講義形式で環境評価に関わる概念、環境哲学や倫理学に関する考察を、そしてフィールド科学教育研究センターの徳山試験地では合宿を実施した。履修生は、工学部2名、文学部1名、法部1名、総合人間学部1名の計5名であった。成績は、教室での討議と最終レポートの評価で実施した。
 講義室では7回のゼミを行い、環境の価値や環境意識などについて討議するとともに、環境を評価する意味について議論した。また、最終レポート作成は、新聞やインターネット上に掲載された環境関連の話題について、その要約と記事に表れた環境評価の扱われ方をまとめた上で、その記事内容に関する自らの考えなどをまとめるものである。フィールド合宿は、8月29日〜30日に、山口県周南市にあるフィールド科学教育研究センターの徳山試験地で行い、TA1名のほか、試験地の職員(技術班長、技術補佐員2名)も加わり実施した。履修生1名の体調が悪かったため、合宿には4名が参加した。まず、安全教育と森林整備方法の概要を学んだ後、檜皮(ひわだ)生産のために維持されているヒノキ人工林の整備作業を行った。道路際の比較的大きくなったイヌビワの伐採では、ロープをかけて引っ張りながら伐倒した(写真1)。暑い中で大変だったが、休憩を頻繁にはさみながら実施した。履修生には、初めての経験であり、楽しい作業だったという感想であった。
 翌日は、試験地の事務室にて、最終レポートの発表を行った(写真2)。レポートの内容は、タンカー座礁事故、メガソーラー発電、泡瀬干潟(沖縄)埋め立て、亀岡スタジアムとマイクロプラスチック(合宿欠席者)に関する話題であった。それぞれの記事で触れられている環境の評価・価値に関してよくまとめられていた。とくに、亀岡スタジアムに関しては、地域のアユモドキ保全活動を行ってきたボランティア団体が、スタジアム建設を中止することで地域の活性化が阻害されることに反対の立場を取っていることに、一様の驚きがあり、環境意識の内と外に関する議論があった。次世代に向けた言葉として、議論が深まり有意義であった。午後は、移転前の徳山試験地があった周南市西緑地を見学する予定であったが、悪天候のため、最終レポートを発表時の議論を受けた修正の時間を十分に取ることとした。
 森林整備作業では、徳山試験地の境技術班長、技術補佐員の石丸さん、徳原さんにお世話になり、ゼミ発表にも参加いただきました。おかげで、議論を深めることができました。ありがとうございました。