ILASセミナー報告2019「環境の評価」

森林情報学分野 教授 吉岡 崇仁



 このゼミは、自然環境を評価することの意味について、自然科学的、社会科学的側面から考えることを目的としている。講義室では、環境評価に関わる概念、環境哲学や倫理学に関して議論を行い、その後フィールド科学教育研究センターの徳山試験地で合宿を実施し、レポートの発表を行った。履修生は、工学部2名、農学部2名の計4名であった。
 講義室でのゼミは計7回行い、環境の価値や環境意識などについて討議するとともに、環境を評価する意味について議論した。また、最終レポート作成は、新聞やインターネット上に掲載された環境関連の話題について、その要約と記事に表れた環境評価の扱われ方をまとめた上で、その記事内容に関する自らの考えなどをまとめるものである。フィールド合宿は、8月27日〜28日に、山口県周南市にあるフィールド科学教育研究センターの徳山試験地で行い、TA1名のほか、試験地の職員(技術班長、技術補佐員2名)も加わり実施した。林内作業に関する安全教育と森林整備方法の概要を学んだ後、檜皮(ひわだ)生産のために維持されているヒノキ人工林の整備作業を行った。受講生には手鋸を使って生木を伐採した経験がほとんどなかったが、技術班長からの安全のための注意や伐採方法の説明を聞いた後、狭い範囲ではあったが、ヒノキ人工林を整備するための除伐作業を行った(写真1)。また、チェーンソーを使った樹木円盤作成にも挑戦した。手鋸と比べてチェーンソーの方が圧倒的に早く切ることができることを実感していた。
 翌日は、試験地の事務室にて、最終レポートの発表を行った(写真2)。天気がよくなかったことから、午後に訪れる予定であった移転前の徳山試験地があった周南市西緑地の見学は、入口付近を見るだけに変更し、発表会の時間を長く取ることに変更した。発表されたレポートの内容は、原子力利用の危険性、ロシアのごみ問題、マイクロプラスチック、深泥池のシカ害に関する話題であった。それぞれの記事で触れられている環境の評価・価値についてまとめた後、自らの意見を述べる形で進められた。受講生間での質疑応答も活発で、発表者もよく考えながら答えていたことが印象的であった。教室でのゼミで取り上げた「人間中心主義」と「非人間中心主義」の視点から、それぞれの話題の位置づけがなされていたが、両方の視点が少なからず含まれていることに気づくことが多かったように思う。
 森林整備作業では、徳山試験地の境技術班長、技術補佐員の石丸さん、徳原さんにお世話になりました。お礼申し上げます。