2017年度森里海連環学実習II

京都大学北海道研究林および北海道大学厚岸臨海実験所において、9月1日から7日にかけて森里海連環学実習IIを実施しました(報告書)。本実習は、京都大学フィールド科学教育研究センター北海道研究林標茶区、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所の共同で実施し、今年度は京都大学より7名、北海道大学より11名の参加者がありました。

【実習の内容】
 受講生は、4〜5名で「森班」、「里班」、「川班」、「海班」の4班を構成した。標茶研究林では、代表的な樹木の枝葉資料を用い、樹木検索図鑑による樹木識別法を学んだのち、天然生林の尾根と谷部のプロット(20×10m)に分かれて調査を行い、胸高直径5cm以上のすべての木の胸高直径と種類を記録した。尾根と谷部で種組成が大きく異なり、環境の違を反映することを学んだ。林内の昆虫相を調査するために、ライトトラップを複数箇所に設置し、捕獲された昆虫の同定を実習し、周辺の森林環境と捕獲された昆虫の種類や個体数との関係を考察した。また、調査プロット近くで土壌断面を作成し土壌層の調査を行った。尾根部の土壌断面では、火山灰の堆積と土壌形成プロセスの進行状況、谷部では、土壌中に見られる褐色斑紋の形成過程について考察した。その後、北海道研究林で取り組んでいるカラマツ人工林の間伐・皆伐・植林実験地を視察し、間伐による人工林環境の改善効果などについて学んだ。水質調査については、水生生物調査地点で採取した河川水と湧水を試料として、簡易比色分析法(パックテスト)と携帯型イオンクロマトグラフィーを併用して分析の原理と実際の試料測定を学んだ。別寒辺牛川流域内等で事前に採取し分析された水質データを、森林集水域における自然と人の連環に関する考察の参考データとして提供した。
 別寒辺牛川および厚岸湖における水生生物実習では、河川の上流と下流、集水域の環境の違い(森林vs.牧草地)などによる水生生物相や魚類の消化管内容物の違いを調べ、さらには別寒辺牛川の流入する厚岸湖と厚岸湾のアマモ場で生物採集を行い、食物連鎖について考察した。
 また、厚岸湖と厚岸湾の数地点で採水した試料について、有色溶存有機物の光学特性関する分析実習を行った。
 実習生は、森林での毎木調査・土壌調査や水生生物の調査結果に関するレポートを作成した。また、愛冠自然史博物館の講演室で、本実習で得られたデータや知見に基づき、「森」「川」「里」「海」の各班それぞれに異なる場の視点から森里海の連環について考察しグループ発表を行った。毎年班ごとに特徴のある発表が行われてきたが、今年度は、里班が劇風の発表を行い、とてもユニークな発表会となった。配役間のやり取りがとてもおもしろく楽しめる発表であったが、その一方で、やり取りの内容は、自然と人間の連環の本質をついた発表であり、実習に相応しいものと高く評価された。その他の班の発表も、それぞれ特徴があり、例年以上の内容だったと考えられる。


毎木調査


土壌調査


厚岸湖における水生生物調査