ポケゼミ報告2014「原生的な森林の働き」

森林情報学分野 講師 中島 皇


 今年度も4月からスタートするべく調整したが、1回生諸君は講義を取り過ぎているようだ。結局、祭日の4/29(火)午後に初回の顔合わせを行った。2回目は5月中旬に北白川試験地のj-podで。6/7(土)には都市近郊林と見本林の見学に上賀茂試験地へ1dayゼミ。最終が芦生研究林で6月末行われる合宿形式ゼミ(2泊3日)になる。当初は定員8名(男6、女2)の参加があったが、女子1名減。学部別は法1、理1、工3,農2、出身地は尼崎市、海南市、大阪市、京都市、福岡市、刈谷市、富山県立山町と京大らしい近畿を中心とした西の出身者達である。フィールド(森林)に出て、自ら体験し、考え、自然と人間の関わり方に興味を持つ契機とすることがこのゼミの目的である。
 6/28(土):集中ゼミは京都市左京区の北端広河原バス停集合で始まる。芦生研究林からの車で佐々里峠を越えて由良川の集水域に。30分程で芦生に。昼食。身支度を整えて事務所構内を見学の後、由良川本流沿い(芦生では標高が低い谷沿い)の自然を観察しながら、トロッコ道を歩く。夕食はみんなで色々な餃子を作って食べた。なかなか好評。自分の「始末」は自分ですることも、このゼミの重要な要素である。夜は、芦生研究林の概要と抱える問題点等の説明受け、話し合った。
 6/29(日):雨が来るかも。昼食のにぎり飯を作って出発。内杉谷にある台杉や雪崩道、暖温帯と冷温帯の移行帯(幽仙谷の大面積・長期プロット)についての説明を受けながら、事務所より400m程高い丹波高地の稜線にある林道へ車で上がって行く。福井県境にある杉尾峠付近からは日本海(若狭湾)も見える。上谷の由良川最源流を出発。毎年参加者に人気の大きな洞のあるトチの大木を今年のメンバーは特に気に入ったようで、入れ替わり洞の中に入ったり、ユニークなポーズを作って写真に収まったり、降ってくる雨さえも楽しんでいた。昨年も思ったことだが、何でも誰かがやってくれてしまう現代社会を、かつて木地師たちが住み、鹿の激増による林床植生の激減している(人為や人間の影響?も見られる)原生的な森林を基準に考えてくれれば、このゼミを開講している意味があると考えているのだが。途中昼食を取りながら、約2時間半歩いて長治谷に到着。量水堰を見て、下谷の大桂、二次林と人工林も観察した。天気も良くなったので、実習はオホノ谷での毎木調査。調査以前の問題として、斜面に立てないという大きな問題が存在したのはショックだった。幽仙谷では天然林からの流出物を回収した。夕食はお好み焼きを腹一杯食べて満足の様子。食後はTAの大学院生である先輩の研究紹介を眠気と戦いながらも聞き、質問をしていた。
 6/30(月) 毎木調査データをレポートにまとめ、回収してきた流出物と水生昆虫の観察とデッサン。最後に宿舎・食堂の片付けとアンケートに答えて、広河原バス停までの送りで、セミナーは終了となった。感想文にはそれぞれに芦生の森への思いが述べられていた。