千徳明日香氏が優秀ポスター賞を受賞

2015年9月12日、信州大学で開催された日本地質学会第122年学術大会(長野大会)にて、千徳明日香氏(瀬戸臨海実験所、日本学術振興会特別研究員(PD))が優秀ポスター賞を受賞しました。

「マイクロフォーカスX線CT画像を用いたサンゴ骨格の内部構造解析」
 千徳明日香(京大・瀬戸臨海・学振PD)・石橋正嗣・森嵜仁美・大野理恵・升本眞二(大阪市大・院理)・町山栄章・富山隆將(海洋研究開発機構)多田井修(株式会社マリン・ワーク・ジャパン)・江﨑洋一(大阪市大・院理)

発表内容
 非造礁性サンゴは,自らの採餌によって栄養を獲得しているため,成長形態は光の条件などの影響を受けにくい.そのため,内因的な要素に起因する成長形態が表出されやすい.骨格表面から形態形成様式が把握しやすいキサンゴ科の非造礁性サンゴにおいては,「出芽の規則性」が属を超えて成り立つ(Sentoku and Ezaki, 2012a-c).しかし,キサンゴ科の中でも造礁性であるTurbinaria peltata(スリバチサンゴ)は,光受容面積を増大させるためにプレート状の成長形態をとり,群体表面から骨格の内部構造の把握は困難である.また,仮軸状キサンゴ科Dendrophyllia cribrosa(オノミチキサンゴ)は,成長に伴い側枝同士が衝突し癒合する.従来,サンゴ個体間での骨格癒合部分の内部構造の詳細は不明であった.本研究では,従来ほとんど注目されなかった,群体内での個体の挙動を,マイクロフォーカスX線CTを用い,非破壊で観察および解析を行った.
 X線CTで撮影した2次元画像を元に,3次元画像を構築し,骨格内部構造を観察した.その後,独自に開発したプログラムを用い,断面画像から共骨部を除去し,分岐状の3次元モデルを構築した.
 スリバチサンゴに関しては,3次元モデルおよび断面画像から,Sentoku and Ezaki (2012c)が示した,「出芽の規則性」が認められた.出芽は,親個体の方向隔壁以外の,2箇所の1次隔壁近傍のみから生じる.出芽箇所の制約は,スリバチサンゴ固有のプレート型の形状(構造的な規制)によって,出芽(成長)可能空間が制限されることに起因する.
 一方,オノミチキサンゴでは,出芽が方向隔壁以外の特定の1次隔壁の近傍のみから順次「螺旋状に」繰り返す.螺旋の中心部では,隣接する各個体が共骨により被覆されることで幹部が形成され,さらには,各個体がほぼ均等の間隔で配置される.オノミチキサンゴの骨格癒合部では,サンゴ個体同士の癒合は認められなかった.また,骨格内部に閉じ込められた埋没個体も認められなかった.つまり,同一群体内で枝間の個体が接近した場合,共骨による癒合は認められるものの,各個体は事前に回避行動をとり,個として存続し,群体内での個体の損失を防いでいる.
 キサンゴ科サンゴでは,造礁性と非造礁性に関係なく,同じ「出芽の規則性」に拘束されている.しかし,それぞれの生息環境条件の微妙な変化に即応し,「出芽の頻度」や「個体間の集合様式」を変えることによって,多様な群体形態を形成している.また,癒合時直前の各個体の回避行動や均等な配置は,「群体全体の効率的な採餌」に寄与している.このような「出芽時の規則性」や「成長時の衝突回避行動」の詳細は,サンゴで代表される「群体性生物の形づくり」の本質的な解明に大きく寄与する.

引用文献
Sentoku, A. and Ezaki, Y., 2012a. Constraints on the formation of colonies of the extant azooxanthellate scleractinian coral Dendrophyllia arbuscula. Lethaia. vol. 45, p. 62-70.
Sentoku, A. and Ezaki, Y., 2012b. Regularity in budding mode and resultant growth morphology of the azooxanthellate colonial scleractinian Tubastraea coccinea. Coral reefs. vol. 31, p. 67-74.
Sentoku, A. and Ezaki, Y., 2012c. Regularity and polarity in budding of the azooxanthellate colonial scleractinian Dendrophyllia ehrenbergiana: Consequences of radio-bilateral symmetry of the scleractinian body plan. Lethaia. vol. 45, p. 586-593.