ポケゼミ報告2015「北海道の森林」

森林情報学分野 准教授 舘野 隆之輔

 北海道研究林を使った少人数セミナー「北海道の森林」を8月6日から9日にかけての3泊4日で行った。今年で4回目の開講である。10名の募集に対して、参加学生は、文学部1名、法学部1名、経済学部3名、工学部2名、農学部2名の計9名であった(1名はガイダンス後に参加辞退)。昨年度の受験生向けの広報誌に本ポケゼミを紹介した効果があったからか、非常に高い倍率だったと聞いている。担当教員に加えて、北海道研究林職員8名とTAの修士学生1名が指導の補助を行った。
 本セミナーは、北海道の森林・湿原の生態系や人と自然の関わりについて森林調査や森林作業などの野外体験を通して理解を深めることを目的として行っている。セミナーでは、緯度や標高の傾度に対する植生の変化、林床の光環境と下層植生の関係、湿地や火山ガスなど特殊な環境傾度に対する植生の変化、間伐前後の光環境の変化など、特に植生と様々な環境条件との関係について学んだ。
 入学直後の4月の後半に京都でガイダンスを行い、実習当日は集合時間までに京都から集合場所である標茶駅まで、各自で移動してもらうこととしていたが、前期の授業を終え、すっかり大学生らしくなって標茶までやってきた。猛暑の続く京都からやってきた学生にとっては、本州と北海道の自然環境の違いを大いに実感したことであろう。
 その後、北海道研究林においてガイダンスや植生に関する講義、切り枝を使った樹木識別実習を行った。2日目は、北海道研究林内のアカエゾマツ人工林において間伐体験を行った。間伐の前後に林内光環境を測定して、間伐が林内の光環境に与える影響について調べた。ほとんどの学生が、チェーンソーを持つのが初めてだったが、緊張しながらも無事に伐採作業を終えることが出来た。その後、野外で樹木識別の実習を行った。3日目は、皆伐跡地やカラマツ人工林、不成績造林地のササ原、ミズナラ天然林など様々な植生タイプにおいて、光環境の測定や植生調査を行った。最終日は、摩周湖・硫黄山を見学し、火山活動により出来た地形や植生を学んだ後、釧路湿原のオンネナイの木道を散策し、湿原の植生について学んだ。今年は、硫黄山の散策路がヒグマ出没の影響で閉鎖されていて、残念ながら中を歩くことが出来なかったが、駐車場や道沿いに植生を観察することが出来た。実習は、この日で解散であるが、数名が釧路空港や釧路駅より帰路についた他は、そのまま標茶に戻って宿泊し、翌日の朝に帰路についた。
 今年は、抽選に漏れた話をたくさん聞くので参加出来た自分はラッキーだったと話す学生や、ポケゼミの抽選漏れになったので北海道研究林で開講する別の実習に参加しにきた学生がいたり、このポケゼミも学生の口コミで徐々に人気が出てきているようだ。学生の期待に応えられるように、募集人数を増やすことも検討していきたい。