ポケゼミ報告2015「貝類の不思議」

基礎海洋生物学分野 助教 中野 智之

 2015年5月2日(土)から5日(火)にかけて、和歌山県白浜町にある瀬戸臨海実験所を拠点として、新規開講科目であるポケゼミ「貝類の不思議」を行った。このポケゼミでは、日本人にとってなじみの深い貝類について、その多様性の高さや、生態、形態の美しさなどの理解を深める事を目的とした。受講生は、経済学部2名、工学部1名、農学部2名の合計5名が参加した。
 初日は、瀬戸臨海実験所の研究棟や宿泊棟の案内から始まり、実験所に併設された白浜水族館において、貝類を含めた海洋生物の観察、バックヤードの見学を行った。バックヤードから水族館を見学する機会はそれほど多くなく、参加者にとっては生き物の飼育や展示の工夫などを裏側から観察し、非常に興味深い体験だったようである。また、この日は夜の水族館でナイトツアーを行い、夜に活発に活動を始めたタコなどの生き物を観察した。
 2日目は、車で串本町に移動し、海岸でコドラートを用いた貝類の分布調査を行った。この調査では貝類の分布を定量的に評価する方法を学んでもらった。調査時には、種の同定が難しかったり、数mm程度の貝が100個体以上いたりし、参加者からは悲鳴が聞こえる事もあった。調査後には串本海中公園にある水族館を見学し、どのような貝類が展示されているかを中心に観察を行った。
 3日目は、白浜町にある番所崎の海岸でコドラート調査を行った。前日にコドラート調査を経験した参加者達は、うまく仕事を分担する事で効率よく調査を進められるようになっていた。お昼からは実験所近くのとれとれ市場へ行き、そこでどのような貝類が販売されているか観察するとともに、午後からの実習で使用する形態観察および解剖のための貝類およびイカを購入した。その後、実習室に戻り、参加者は購入した貝類やイカから2種を選び出し、解剖を行った。その際には、解剖図と比較しながらそれぞれの体の構造の理解を深めた。特に、貝類のオスとメスの違いなどを知り驚いていたようである。この日の夕食に、解剖で使ったものや解剖で使用しなかったものも含めて、安全に食べられるものは食材として使用した。シラバスでは貝を食べるとは書いていなかったものの、参加者達は貝が食べられるはずと期待していたそうである。私自身は貝が食べられないので、参加者達で楽しんでもらった。
 最終日には宿泊棟、実習室の掃除をし、アンケートとレポートの仮提出をしてもらい解散とした。参加者達は普段何も気にせず食べていた貝類の体の構造や、貝類の奥深さを知る事で非常に満足してもらえたようである。実習生の感想や満足度から、教員側としては、新規でポケゼミを立ち上げて良かったと思えた実習であった。