新人紹介 中川 光

森林育成学分野 特定助教 中川 光

 今年度より、芦生研究林・上賀茂試験地・北海道研究林の3施設からなる教育関係共同利用拠点の特定助教として、芦生研究林に着任しました。主な業務は他大学向けの公開実習・講座の調整・運営や講義担当、拠点施設の教育研究利用促進です。
 京都大学は修士課程から、理学研究科の動物生態学研究室にて、川の魚や虫のニッチ利用パターンならびに食物網構造の解析などを行ってきました。芦生研究林には、かつて同研究室の先輩に誘われて M1の時に調査合宿で初めて訪れて以来、博士・ポスドクを通して研究活動のメインフィールドとしてきました。
 博士課程での主要な研究活動は、食物網の定量的な記載による群集理論の検証を行いました。野外観察に基づく捕食者-被食者相互作用の記載は通常単純なつながりの「有る・無し」によって示されます。このつながりを各魚類種(7種)の各水生昆虫種(約160種)に対する摂餌速度としてより厳密・定量的に記述することで、一見複雑に見える食物網構造の中にも相互作用強度の捕食者・被食者体サイズ比依存といった単純なルールが存在することを示しました。また、多くの生態学の理論で想定される、捕食者の機能の反応(相互作用強度の被食者密度依存性)の効果が相対的重要性という観点からみると実は小さいといったことなどを明らかにしました。
 最近では、芦生研究林に25m×0.4m の人工河川を16本建設し、これまでに行ってきた観察から得られた生物群集のパターンを生み出すと考えられるメカニズムについて、操作実験手法による検証を行っています。
 このほか拠点事業の業務はもちろんですが、せっかく芦生研究林に住込みという職場環境なので、現場に張り付かないと出来ないような自然史研究なども進めていきたいと考えています。

ニュースレター39号 2016年7月 新人紹介