新人紹介 澤田 英樹

里海生態保全学分野 特定助教 澤田 英樹

 2016年7月より、舞鶴水産実験所に特定助教として着任しました。
 子供の頃から野外を駆け回り、というタイプではなく、大阪の郊外で静かに成長しました。ただ、祖父母が四国の漁師であったので、夏休み等には祖父母宅に長期間入り浸り、砂浜の生物と風景を延々と眺めていました。
 学生時代は京都大学農学部の海洋生物機能学研究室にて、マガキの浸透圧適応の仕組みについて修士課程まで携わり、細胞を培養しつつ室内に籠っていました。そこで身に付けた分子生物学の知識を利用し、博士後期課程より二枚貝の浮遊幼生の種判別法の研究を立ち上げました。というのも、二枚貝の多くは発生直後に浮遊幼生として海中を漂いますが、形態に基づいて種を同定するのはほぼ不可能という事情がありました。新たに開発した技術を使い、鹿島灘の砂浜に現れる二枚貝浮遊幼生の出現動態を調べました。鹿島灘のような外海に面した波当たりの強い砂浜は露出性(≒開放性)砂浜海岸と呼ばれ、このような環境では遮蔽(しゃへい)性(≒ 内湾性)砂浜海岸と生物相が全く異なります。この露出性と遮蔽性の違いが生じるメカニズム解明の一端として二枚貝の浮遊幼生期に注目しました。
 その後、河口域・汽水湖の二枚貝であるヤマトシジミや、現在ではマナマコの生態について研究を行う機会に恵まれ、砂浜だけでなく、干潟、藻場、泥場やカキ礁など多様な環境を比較するうちに、全ての環境を構成する基盤となる「地形」が生物の分布に重要であることを益々実感してきました。この「地形」をうまく定量化して評価できるよう、日々試行錯誤しています。
 舞鶴水産実験所という、調査船・飼育施設・魚類標本などの研究環境が連携した恵まれたなかで、さらなる研究、良い研究環境の維持に貢献できればと思っています。

ニュースレター40号 2016年10月 新人紹介