小路 淳氏が日本水産学会奨励賞 受賞

2005年4月、小路 淳氏が日本水産学会奨励賞を受賞しました。

 フィールド科学教育研究センターCOE研究員小路 淳氏(河口域生態学分野)が、平成16年度日本水産学会奨励賞を受賞いたしました。この賞は、優れた研究業績を上げ将来の発展が期待される38歳未満の若手研究者に与えられるもので、水産学研究者の登竜門ともいえます。受賞対象となった研究『サワラ仔稚魚の魚食戦略と資源加入機構に関する研究』は、小路 淳氏の博士論文研究でもあります。
 研究の概要は次の通りです。多様な生活史を持つ魚類の中にあって、生活史初期に高成長・高死亡を経験する魚種の生残・資源加 入機構を詳細に調べた研究例は世界的にも皆無に近い。小路 淳氏は初期から完全な魚食性と高成長を示すサワラに注目し、特異な初期生態と資源加入機構の解明に取り組んだ。サワラは飢餓に著しく弱いため、摂餌開始から数日というごく短期間に経験する餌料環境が初期生残および加入量変動の主要因となることを明らかにした。また、これまで未知の部分が多かった魚食性仔魚の生理・生態・行動に関する新知見を発表した。一連の研究は、過去に欧米諸国で提唱された‘Match/Mismatch’仮説を、飼育実験と野外調査の 両面から実証したものである。また、近年資源枯渇が著しい本種の栽培漁業の推進に不可欠な知見を提供した。
 小路 淳氏は、受賞対象となったサワラの研究に引き続き、最近は陸域や河川水の影響を強く受ける河口域を中心に、スズキ類などの 重要魚類の初期生態と生息環境との関係を研究し、すでに多くの成果を報告しています。持ち前の生態学的分析力とアメリカンフットボールで鍛えた体力を活かして、フィールド科学教育研究センターが進めている森里海連環学の牽引者としても、今後のパワフルな活躍が大いに期待されます。
(舞鶴水産実験所 山下 洋)