檜皮採取者(原皮師)養成研修

徳山試験地長/森林情報学分野 講師 中島 皇

 2015年10月26~27日に公益社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会主催の檜皮(ひわだ)採取査定会が徳山試験地で実施された。この査定会は、保存会が伝統技術者である原皮師(もとかわし)の採取技術向上およびその技術の査定のために毎年1回行っているもので、今回17回目を数え、参加者は近畿地方を中心に、東は岐阜から西は九州までの技術者が集まった。研修生(ランクB・C・D・初)14人、査定員8人、保存会の正会員等10人の参加者であった。試験地では2006年に保存会から派遣された原皮師によって荒皮が剝かれた。その後10年が経過して、それらの木から初めて製品となる黒皮の檜皮が採取されることとなったのである。
 査定会ではまず査定者が研修生の人数に応じて対象木(1人あたり3本程度)を選定する。研修生はそれぞれ指定された対象木にぶり縄、へら(カナメモチ)、腰鉈のみで檜皮を剥がしながら登って行く。2日目の午前中は採取した檜皮の検量と片付けになる。この作業も見るべき所は多い。採取してきた檜皮を丁寧に揃えて束にし、大包丁で決まった大きさに切り揃えてから、それらの檜皮を俵のように丸く締め括り、製品として整えていく作業である。初日の午後から翌日の午前中までが技量査定の対象になるため研修生は皆真剣である。
 査定会はこれまで保存会の内部行事と位置づけられて実施されていたようだが、試験地として周南市の連携事業にもプラスになるような査定会に出来ないかと調整し、保存会に協力を依頼して希望する市民の見学を認めて頂いた。査定を受ける研修生にとっては迷惑だったかも知れないが、試験地の職員を含めて多くの見学者が伝統の技と研鑽を積む若者の姿に見とれていた。
 以上が査定会の概要であるが、査定会が実施された林分からは査定の対象木となった立木以外にも檜皮採取が可能なので、後日(2015.12~2016.1)保存会の原皮師が採取の研修を実施した。今年度の檜皮採取量は合計で2,207.6kgとなった。
 檜皮を採取するには、大前提として70年生以上のヒノキ林が必要である。徳山試験地には昭和の初め(1927年、1928年)に植栽されたと記録のあるヒノキ林が2林班に広がっている。残念ながらこのヒノキは京都大学が植栽したものではなく、徳山町(現周南市)が県行造林として植栽したものである。その意味では地域の宝を京都大学が引き継いでいることになる。
 徳山試験地は、2008年度に文化庁の「ふるさと文化財の森(檜皮)」に選定された(ニュースレターNo.14参照)。また、2002年度から2020年度の予定で近畿中国森林管理局山口森林管理事務所ととともに城山国有林(山口県岩国市)において檜皮採取に関する共同試験を実施しており、これらの活動も相まって、今後研修が発展していくことを期待する。関係の方々の努力と御協力に感謝したい。

年報13号