ポケゼミ報告2009「C.W.ニコルの“アファンの森”に学ぶ」

里山資源保全学分野 柴田 昌三 教授


 柴田が担当するようになって3回目の少人数セミナー「C.W.ニコル“アファンの森”に学ぶ」を,2009年度も高い競争率から選ばれてきた7名の一回生を迎えて実施した。参加した学生の所属は,文学部2名,工学部1名,農学部4名(男子3名,女子4名)であった。今年度も昨年度同様,5月18日の説明会のあと,7月13日に里山に関する予習を行った。また,彼らがアファンの森に旅立つ直前には,昨年度と一昨年度の参加学生が企画して,フィールド研上賀茂試験地で同窓会が開催され,これから参加しようとする学生たちを交えた交流会が開催された。自然に対する熱い想いをニコル氏からしっかりと植え込まれた学生たちの学年を超えた交流風景は,指導者として心暖められるものであった。
 信州の黒姫山周辺におけるセミナー本番は8月11日~16日に行われた。今年度は補助者としてを,フィールド研森林系技術長の一人である境氏にお願いした。また今回は,初年度の本セミナーを担当された田中名誉教授にもアファンの森初日にご参加いただいた。8月11日は移動のみに時間を用いた。現地まではお盆で混雑が予想された中央道は避け,北陸道を利用した。12日は昨年同様,アファンの森での実習に向けての予習として,長野県環境保全研究所,戸隠森林植物園と戸隠神社奥社の見学を行った。このように準備万端で行われた13~15日のアファンの森での実習は,やはり学生たちにとっては非常にインパクトのあるものであったようである。
 我々を迎えてくださったのはアファンの森財団代表のニコルさん,森を実質的に管理しておられ地元農民でもある松木さん,現地で財団をしっかりとお守りしておられる石井さんの実質上トップスリーのお三方である。ニコルさんの聞く者すべての心にしみこむような語りかけと経験談,松木さんの朴訥でありながらあまりにも的を得た経験に基づく理論,石井さんの若い感性からもたらされる語り口は学生たちの心を捉えてあまりあるものであった。
 初日と三日目のアファンの森での見学,二日目の新潟県側妙高山系における原生的森林の見学と解説はいずれも学生たちに大きなインパクトを与えたようである。また,恒例のニコルさんの我々の宿訪問は初めて二回を数えた。一回目にはシカ肉を,二回目にはシシ肉をご持参いただき,学生たちと楽しいひとときを時間外でも提供していただいた。ここに改めて感謝申し上げたい。今年度も我々はラボランドくろひめでロッジを一つ借り上げ,六日間の共同生活を送った。境氏の献身的なご協力によって学生たちと我々の関係も非常に円滑であり,学生たちは大きな感動を持って帰ってくれたようである。