ポケゼミ報告2009「環境の評価」

森林資源管理学分野 吉岡 崇仁 教授


 少人数セミナー「環境の評価」は,A・B群のセミナーとして開講し,自然環境を評価することの意味について,自然科学的,社会科学的側面から解説と討論の形式で実施した。受講生は,工学部3名,農学部3名,理学部1名の合計7名であった。教室で7回の講義形式の授業と昨年度はできなかった芦生研究林での合宿を実施した。
 「環境を評価する」とはいったいどういうことかという点について,環境の持つさまざまな価値を人間が認識し,自らの態度や行動を決定する際には,その環境の価値を判断している,という枠組み設定に基づいて議論を進めた。
 講義のはじめの段階で,環境を評価するということの意義について各自の理解ができたようであるが,そもそも「人間は環境を評価する立場にあるものなのか」という根源的な疑問も提示され,議論を深めることができたと思う。
 環境の価値については,森林を例として,「生態系サービス」や「多面的機能,公益的機能」と呼ばれているものを概観したうえで,人間にとっての利用価値・非利用価値の整理を行った。そして,それらが人間中心主義・非人間中心主義的な環境の捉え方とどのような関係にあるか,また,環境倫理学の構造についても考察した。また,受講生が環境保護や環境問題を考えるに当たって,人間中心主義的立場に立つか非人間中心主義的立場に立つかを考え,「自分が考える地球温暖化解決法」について討議することで,自らの立場を再確認した。講義の最後として,環境影響評価,いわゆる「環境アセスメント」を題材として「持続可能な発展と環境評価」について議論した。レポートとして,環境に関する新聞等の記事を選び,そこに含まれる「環境評価」の文脈の抽出と解説を課した。芦生研究林での合宿は,平成21年8月4-5日に実施した。4日の午後から,研究林の藤井技術班長の協力を得て,長治谷でのシカ排除実験の現場(写真左)や,シカ食害やクマはぎ被害木(写真右)の観察を行った。その後,レポートの発表と討議を行った。翌5日は,廃村灰野まで行き,森と人の営みの関係の歴史の一端に触れ,環境評価の意味を再考するきっかけとした。