大津波による淡水魚への影響

2018年1月26日、久米 学特定研究員らによる論文が、オープンアクセスの電子ジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました。

Kume, Manabu; Mori, Seiichi; Kitano, Jun; Sumi, Tetsuya; Nishida, Shotaro
Impact of the huge 2011 Tohoku-oki tsunami on the phenotypes and genotypes of Japanese coastal threespine stickleback populations.
(イトヨ個体群の表現型と遺伝子型に対する東日本大震災の大津波の影響)
Scientific Reports, 8, Article number: 1684 (2018)

DOI: 10.1038/s41598-018-20075-z

 本論文では、東日本大震災の際の大津波によって、岩手県大槌町に生息するトゲウオ科魚類である淡水性イトヨに表現型の変化が生じたことを明らかにしました。また、淡水性イトヨの一部が、津波の引き波により海の近くに移動し、地盤沈下によって形成された湧水性の水域で生き残り、そこで川と海を往復する生活史を有する遡河性のニホンイトヨと交雑し、新規集団として定着していることが形態学的・遺伝学的解析により確認されました。これは津波という自然現象が、生物多様性の生起に寄与することを示した希有な事例です。