気仙沼シンポジウム報告

沿岸資源管理学分野 益田 玲爾

 東日本大震災の約1年後となる2012年3月13日、宮城県の気仙沼市民会館において「森は海の恋人シンポジウム 海と共に生きる —震災復興と森は海の恋人運動—」が開催されました。一般市民や行政関係者に加え、同地域で活動しているボランティアら約150名の来聴者がありました。
 シンポジウムは三部構成で、第一部では、フィールド研の初代センター長である田中克名誉教授の開会挨拶に続き、畠山重篤氏(NPO法人森は海の恋人;京大フィールド研社会連携教授)が国連フォレストヒーローの受賞報告を兼ねた基調講演を行いました。第二部では、気仙沼・舞根湾をフィールドとした生物環境調査の概要(田中克氏)、水質および底質(山本光夫氏:東京大学)、プランクトンの発生状況(山田雄一郎氏:北里大学)、魚類群集の回復状況(筆者)について報告されました。第三部では気仙沼の復興を目指したまちづくりへの提案として、三宅島噴火からの復興(海野義明氏:NPO法人オーシャンファミリー)、過疎地の限界集落問題(一ノ瀬友博氏:慶應義塾大学)、湿地・干潟再生の意義(吉永郁生氏:京都大学)等の話題が提供されました。
 畠山氏の講演では、「森は海の恋人」運動が広く受け入れられてきた理由として、物事を対決ではなく詩の心でとらえてきたことが鍵であること、また、自然から学び、森と海、人と人をつなぐことの重要性について考えさせられました。
 気仙沼を含む東北地方沿岸では、津波への対策として大規模な防潮堤建設の計画が進められています。しかし、「森は海の恋人」運動の成果や、舞根湾での生物環境調査の結果をふまえて、気仙沼市舞根地区の住民の多くは、防潮堤の建設よりも高台への住居移転を望んでおり、地盤沈下の進んだ汀は干潟へと戻そうとの合意も進みつつあるようです。被災地の逆境は、人と自然とのあるべき姿を考え、より善い方向へと舵取りする機会となることでしょう。東北地方の復興と飛躍に、自然科学の視点から寄与できればと思います。

ニュースレター27号 2012年6月

(参考)
東北復興支援学生ボランティア(総合案内ページ)