ポケゼミ報告2012「北海道の森林」

森林環境情報学分野 准教授 舘野 隆之輔

 今年度より北海道研究林を使った新規の少人数セミナー「北海道の森林」の募集を開始した。日程は8月5日から9日にかけての4泊5日である。7名の募集に対して、参加学生は、文学部1名、経済学部2名、工学部2名、農学部1名、総合人間学部1名の計7名であった。また北海道研究林職員8名とTAとして森林情報学分野院生1名が指導の補助を行った。
 本セミナーは、北海道の森林・湿原の生態系や人と自然の関わりについて森林調査や森林作業などの野外体験を通して理解を深めることを目的として行った。セミナーでは、緯度や標高の傾度に対する植生の変化、林床の光環境と下層植生の関係、湿地や火山ガスなど特殊な環境傾度に対する植生の変化、間伐前後の光環境の変化など、植生と環境条件との関わりについて、野外調査や自然観察を通して理解することに主眼を置いた内容とした。
 初日は、各自で京都から集合場所である北海道研究林の最寄駅である標茶駅まで移動してもらったが、当日の気温は肌寒く、猛暑の京都からやってきた学生にとっては、本州と北海道の自然環境の違いを実感したことであろう。その後、北海道研究林においてガイダンスや植生に関する講義、切り枝を使った樹木識別実習などを行った。2日目は、天然林遊歩道において樹木識別実習を行った後に、研究林内の様々な植生タイプ(ミズナラ天然林、シラカンバ天然林、カラマツ人工林、トドマツ人工林)において、林床の光環境の測定と毎木調査、下層植生の被度調査を行った。3日目は、屈斜路湖の北に位置する藻琴山(標高1000m)の登山を行い、北海道における森林限界付近の植生を見学し、標高に沿った植生の変化について学んだ。また屈斜路湖と摩周湖を見学し、道東のカルデラ湖の成り立ちについて学んだ。その後、川湯硫黄山付近の火山ガス噴出孔からの距離に応じた植生の変化について、川湯エコミュジアムセンター裏のアカエゾマツ天然林からつつじヶ原自然探勝路沿いを硫黄山麓まで歩いて見学した。4日目は、北海道研究林内のアカエゾマツ人工林において間伐体験を行った。間伐の前後には、2日目と同様の調査を行い間伐によって林内光環境がどのように変化するか、また間伐によってどのように下層植生が変化していくかについて学んだ。生まれて初めて触るチェーンソーにどきどきしながらも、無事に間伐作業を終えることが出来た。最終日は、塘路湖エコミュージアムセンターと細岡展望台を訪問し、湿地の植生について学んだ。様々な学部からの参加となったが、普段はあまり気に留めない森林について色々と学び、京都ではなかなか体験できない大自然でのセミナーを体験出来て、受講生は皆、満足して真夏の京都へと帰って行った。
 当セミナーの開催にあたっては,北海道研究林職員およびTAには多大なるご協力をいただいた。また川湯自然保護官事務所および根釧西部森林管理署には川湯入林に際してご協力頂いた。この場をお借りしてお礼申し上げる。