ポケゼミ報告2012「海産無脊椎動物-分類群と形の多様性」

海洋生物進化形態学分野 講師 宮﨑 勝己

 このポケゼミは、海産無脊椎動物の種類(分類群)や形の多様性について、実物の採集と観察を通じ理解を深めていく事を目的として行うもので、京都での2回の講義と、瀬戸臨海実験所での4泊5日の実習とで構成される。今年度の受講学生の内訳は、理学部1名、工学部1 名、農学部3 名の計5名(全て男性)で、奇しくも前年度と同じ学部構成であった。
 2回の講義は、いずれもフィールド研会議室にて放課後に行った。4月16日に行った第一回目の講義では、オリエンテーションとして各自の自己紹介、ポケゼミ全体の概要説明と今後の日程調整を行った。また、ある英語で書かれた海洋生物学の教科書から海岸動物の採集と保全に関する章について、その和訳を宿題として課した。6月13日に行った二回目の講義では、海の動物の多様性に関する概説的な講義を行った後、実習日程の調整と宿題の回収を行った。
 実習は9月26日から30日の4泊5日の日程で、瀬戸臨海実験所にて行った。学生5名のうち1名は都合がどうしても付けられず、残念ながら実習欠席となった。実習初日は午後4時半に集合し、オリエンテーションと所内見学を行った。二日目は実験所周辺の番所崎での磯採集と採集物の同定作業を行った。三日目は水族館見学に引き続き、実験所裏の北浜での砂及びフジツボ採取と採取物からの小型ベントスの抽出を行い、採集物の同定を行った。並行して小形ベントス採集物の中から走査電顕観察用の試料を各自選び、観察のための試料作りを進め、その日の夜には2名が実際の観察を行った。四日目は残り2名の電顕観察をさせながら、同定結果の整理とレポート作成を進めさせ、夜は実験所宿泊棟食堂にて、ささやかな反省会を行った。最終日の午前中に宿泊棟及び実習使用スペースの片付けと掃除を行い、レポートの提出をもって現地解散した。今回は実習を大潮に重ねることが出来ず、特に二日目の磯採集は、南方に位置する台風の影響もあって非常に条件の悪い中行ったが、最終的に例年とほぼ同じ数の動物門及び動物種を実際に観察する事が出来、教員・学生とも満足度が高いものとなった。
 このポケゼミでは、今回まで夏季休業期間中に実習を行っていたが、この期間中の臨海実習の数が近年更に増加し、海況の条件が良い時に実習を設定することが難しくなってきていることから、次年度からはゴールデンウィークの頃に実習日を固定して開講する予定にしている。