ポケゼミ報告2012「森のつくりだすもの」

森林生態保全学分野 准教授 徳地 直子


 森は有形・無形のさまざまなものを私たちにもたらしてくれるが,森の実際の姿や森の作り出す機能の創出のためにどのようなしくみがあるのか,よく知っているとはいえない。このポケゼミ“森のつくりだすもの”は,森に入って,森にふれ,さまざまな森の性質をとらえることを目的としている。
 本実習は,和歌山研究林において夏季休業期間に行われる。和歌山研究林はフィールド研の研究林においても集落から離れた自然にめぐまれた地域にあり,また人工林率の高い森林である。そのため,以前は人工林の育成に関する林学教室の実習が行われていた。このような特徴を生かし,自然の森林を体験するだけでなく,現在産業として厳しい状態にある林業についても考えるきっかけとしてもらいたいとカリキュラムを立てている。今年度は、2011年秋の台風11号により林道がほぼ全壊し、利用場所が限られた中での開催となったため、期間を短縮して行い、以下のようなスケジュールとなった。

第一日目
 研究林を源流のひとつとする有田川の下流地点に集合した。有田川に沿って最上流にある和歌山研究林に向かって河川水の調査を行いながら移動し、流程に沿った水質の変化を調査した。

第二日目
 和歌山研究林において、林内を散策し、森林生態系の様子を観察するとともに、樹木の識別を行い、植生の分布と森林生態系の特徴について学習した。天然生林と人工林の比較を行い、人工林を管理することの重要性を体感した。その後、実際に枝打ち、間伐などの手入れを体験した。

というスケジュールであった。特に今年度は、昨年度の台風11号の被害状況を実際に見てもらい、土砂で流された林道などを歩くことで、自然の力を感じてもらえたのではないかと思う。一方で、人工林は植栽にはじまり、下刈り、枝打ち、間伐など様々な手入れがあって成り立っていることも、作業を通じて学習した。普段何気なく感じている森林の多様さ、人との関わりについて考える機会になったのではないかと思っている。