研究林(演習林)実習IV「冬の北海道」 2004年2月22〜28日
「北海道東部根釧地方の冬」

講師:フィールド科学教育研究センター 教授 竹内 典之


 フィールド科学教育研究センター北海道研究林白糠・標茶両区を拠点に6泊7日の実習を、田中 克教授(フィールド科学教育研究センター長)の応援を得て実施した。北海道道東地域の冬季は、日本でも特有の気候を呈する。本実習は、北方系森林に関する知識を、山スキーを使っての森林観察、積雪・凍土観察や地元産業の見学などを通じて習得することを目標とし、また、周辺の豊かな自然の観察も行い、森林・環境・産業の関係について考究することを目的とするものである。森林科学科3回生を対象とし、男子4名、女子8名の計12名の参加を得た。森林科学専攻森林情報学分野(DC1名、MC1名)と地域環境学専攻生産生態科学分野(DC1名)の院生が応援に駆けつけてくれた。

2月22日(日):午後3時30分開講。ガイダンスと山スキーによる歩行訓練。自炊による夕食後、講義と討論「北海道の森林」。
2月23日(月):午前中は白糠区樹木園において樹木識別実習。午後は6林班での森林観察。帰棟後、白糠区天然林の構成樹種についての討論。自炊による夕食後は、講義と討論「白糠区天然林の林分構造」。
 発達しながら北海道を横断した低気圧の影響を受け、予定のコースを短縮せざるを得なかったが、低地の落葉広葉樹林から尾根筋の針葉樹林への変化を観察することができた。夜の討論では、学生各人が各樹種の特徴や識別法を発表した。
2月24日(火):午前8時30分に白糠区管理棟を出発。王子製紙釧路工場、環境省釧路湿原野生生物保護センター、環境省温根内ビジターセンターの訪問後、標茶区へ移動。夜は講義「根釧地方の気象」。
 最初の見学地である王子製紙釧路工場では、馬場事務部調査役らによる工場の概要説明、古紙貯蔵、チップヤーダー、段ボール原紙製造工程を見学後、若干の質疑応答が行われた。
 野生生物保護センターでは、講師佐々木調査研究員の計らいで保護されている傷病鳥シマフクロウとオオワシを間近から観察後、同センターの活動についての講義を受けた。
 温根内ビジターセンターでは、休館日にも関わらず若山氏の出迎えを受け、湿原端の森林、低層湿原、高層湿原の冬の景観を観察した。昨日のブリザードのため、残念ながらウサギの足跡がいくつかあっただけで、他の動物の痕跡は全く確認できなかった。
2月25日(水):午前中は急遽実習内容に追加した毎木調査。午後は積雪と土壌凍結観察。帰棟後夕食までに各班による調査データの整理と作図・作表。夜は、院生によるプレゼンテーション「日本の人工林資源」と1班による調査結果の発表。
 午前中は学生12名を1〜3班に分け、各班に大学院生1名、教職員を配置して、各班0.1haの円形プロットを設定し、プロット内の胸高直径5cm以上の毎木調査をした。
 午後は夏季実習において土壌断面調査を行った試験地の周辺で、積雪と土壌凍結の観察を行った。
2月26日(木):11林班から4林班までの森林観察縦走。帰棟後は2班、3班による昨日の調査結果の報告会、夕食後は院生によるプレゼンテーション「森林ボランティア」。
 朝はスキーに雪が付き、一時は雨も降り、昼前からは重い雪に悪戦苦闘した。下りになってもスキーが滑らず、最後の林道では足の重くなった学生もあった。
2月27日(金):午前中は藻琴山の森林観察、川湯エコミュージアムで昼食後、同歩くスキーコースにおいてアカエゾマツ林観察、帰棟後アンケートと感想文の作成、夜は北海道研究林職員との懇親会。
 藻琴山の雪質が極めて劣悪で、登りより下りに時間がかかり、午後の予定を変更せざるを得なかった。アカエゾマツ林では、たくさんのエゾシカが観察でき、また食害も激しく、このコースは今後の実習コースとして検討の価値がある。

 実習を終えて:無事6泊7日の実習を終えることができた。従来のプログラムに大きな変更を加えたが、学生たちは熱心で、ほぼ初期の目標は達したのではないかと考える。実習の最後にアンケートを実施し、感想文の作成をしたので、これらを詳細に分析し、今後の実習に生かしていきたいと考えている。



− 実 習 の 様 子 −

白糠区森林観察 野生生物保護センター
冬の釧路湿原 毎木&凍土調査
調査結果の発表 実習打ち上げ(木蝋燭)