研究林(演習林)実習V「夏の北海道」 2003年9月7〜13日
「北海道東部根釧地方の森林景観」

講師:フィールド科学教育研究センター 教授 竹内 典之


 フィールド科学教育研究センター北海道研究林標茶区を拠点に6泊7日の実習を、山下 洋教授(FSERC舞鶴水産実験所所長)、向井 宏教授(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所所長)、小崎 隆教授(農学研究科・土壌学)、新常仁志助手(農学研究科・土壌学)、伊丹勝彦講師(福井県立大学・土壌学) の応援を得て実施した。本実習は、森林景観が地象・気象・海象・生物・人為の相互作用によって形成されていることを実体験し、道東地方の森林景観に大きく寄与している森林の階層構造とその変化および火山灰土壌の調査法の習得を目標とし、また、森林と海との相互作用を考察するきっかけを提供することを目的とするものである。森 林科学科3回生を対象とし、男子13名(資源生物科学科1名を含む)、女子8名の計21名の参加を得た。

9月7日(日):午後2時開講。ガイダンスと講義「根釧地方の地形・地質・気象」の後、標茶区構内見本林において樹木識別実習を行った。
9月8日(月):午前中は北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所において向井教授から講義「森と海の相互作用」を受け、午後は向井教授の案内で実験所内の海岸林、厚岸湖、厚岸湖に注ぐ辺寒辺牛川の観察を行った。向井教授自身が蓄積された豊富なデータに基づく講義は、学生諸君には大いなる参考になったと思う。夕食後には、翌日の雄阿寒岳登山に向けて講義「根釧地方の森林」を行った。
9月9日(火):昨夕来の雨も小止みになり、予定通りに雄阿寒岳における森林の垂直分布の観察に向かった。登山を始める頃には雨も止み、霧のため視界良好とはいかないものの森林景観の変化を楽しみ、樹木識別に取り組みながら登山した。体調不良の女子学生3名は5合目(実質的には8合目くらいの感じで、森林限界上のハイマツ帯)で折り返したが、あとは全員無事登頂した。夕食後は登山の疲れが若干感じられたが、学生達は小崎教授による講義「根釧内陸部の火山灰土壌とその調査法」を傾聴していた。
9月10日(水):終日、生憎の小雨の中で予定通り「根釧内陸部火山灰地域の土壌観察@」を実行した。この日の観察は、予め小崎教授等によって準備されていた3観察点で、小崎教授のレクチャーを受けながら土壌断面の観察を行った。夕食後は、観察結果を各自がとりまとめ、レポートを作成した。
9月11日(木):学生を1〜3班に分け、研究林の北端、中央部、南端において土壌断面を掘り出し、調査を行った。午後は、調査結果を各班でとりまとめ、夕食後各班代表によるプレゼンテーションを行い、質疑応答の後レポートを作成した。
9月12日(金):4班編成で標茶区10林班内森林動態観測固定標準地において毎木調査を行った。1・2班がPlot10−1、3・4班がPlot10−2の調査を午前中に実施し、午後はPlot毎にデータ入力・図表作成・考察を行い、各班代表によるプレゼンテーションと質疑応答の後、レポートを作成した。

実習を終えて:無事6泊7日の実習を終えることができた。従来のプログラムに大きな変更を加えたが、学生たちは熱心で、ほぼ初期の目標は達せたのではないかと考える。実習の最後にアンケートを実施したので、詳細に分析し、今後の実習に生かしていきたいと考えている。



− 実 習 の 様 子 −

辺寒辺牛川の観察 雄阿寒岳
雄阿寒岳頂上 固定標準地調査
土壌断面の観察 土壌断面調査