少人数セミナー「森林の更新と動態」 2004年4月17日−6月13日

講師:フィールド科学教育研究センター 助教授 安藤 信


 京都市市街地周辺林、奥山の芦生研究林、その中間に位置する北山・八丁平湿原周辺の天然林・二次林を現地踏査し、既設の永久調査地などを用いて、森林の水平・垂直分布、遷移過程の違いに伴う林分構造や種組成の違いや動態について講義・実習を行った。
 シラバスの説明がやや難解であったこと、受講生に聞くと、申請の締め切りが早く登録できなかった友人も多いとのことであった。受講生は1名であったが、追加募集は行わなかった。セミナーは4月〜6月の土曜日を中心に行い、数名の大学院生が協力してくれた。受講した学生も植物に詳しかったため、今回はレベルが高くなってしまったきらいがある。

○4月17日(土)午前(京大北部):授業の概要と森林の野外調査における注意点を説明した。内容は森林の遷移と更新の違い、階層構造や遷移に伴う種組成や多様性、さらに講義・実習で訪れる森林を紹介した。植物の同定に関する資料を配布した。
○4月24日(土)一日(大文字山):非常に寒い一日であった。山道から樹木の識別実習を行い、京都の市街地を覆っていたマツ林の「マツ枯れの影響」とその後の森林に遷移について説明した。中腹では京都の森林景観を回復するために国有林との共同研究として始まった「マツ林の更新」試験地を見学し、自然に落下してきたアカマツ種子に期待する更新技術である「天然下種更新」について解説した。
○4月29日(祭)一日(芦生):モンドリ谷天然林16haの冷温帯スギ・ブナ天然林の毎木調査に参加した。樹木種数がきわめて多い天然林の尾根部と沢部の植生の違いを認識するとともに、大面積・長期森林調査の難しさを体験した。
○5月8日(土)一日(八丁平):過去の人為的攪乱の程度が異なる北山・八丁平のいくつかの二次林の調査を試みた。永久プロットの下層植生の経年変化を調査し、近年のシカによる被害の拡大と、森林の更新に及ぼす影響について検討した。
○5月22日(土)一日(大文字及び東山):午前中は大文字山の「マツ林の更新」試験地で、地表処理の違いに伴うマツの発芽・定着を明らかにするために設置した「アカマツの直播試験」について説明し、さらに当年生マツの成長に伴う各器官の形態的変化や鳥などによる発芽・定着過程における動物害を観察した。午後は照葉樹林が拡大している東山において、「種の多様性を回復させるために国有林が取り組む森林施業」について現地で解説し、森林の階層構造を明らかにするための樹高測定法について学んだ。
○6月5日(土)及び13日(日)一日(芦生):芦生の燃料採取などの人為的攪乱が繰り返された跡に成立したミズナラ二次林の間伐後の成長の違いを明らかにした。また下木・亜高木広葉樹の萌芽更新について解説した。

 本セミナーでは生態学研究センターの清水良訓君、農学部森林育成学研究室の岡田泰明君、呉初平君、阿部祐平君が協力してくれた。6月13日には森林科学科と理学部の2名の1回生もこの授業に参加した。



− 実 習 の 様 子 −