少人数セミナー「森林の更新と動態」 2005年4月16日―6月18日

講師:フィールド科学教育研究センター 森林資源管理学分野 助教授 安藤 信


 京都市市街地周辺林、奥山の芦生研究林、その中間に位置する北山・八丁平湿原周辺の天然林・二次林を踏査・調査し、森林の水平・垂直分布、遷移過程の違いに伴う林分構造や種組成の違い、そしてその動態について講義・実習を行った。セミナーは4月〜6月の土・日曜日に行った。

○4月16日(土)午前:森林の更新と動態(講義):授業の概要と野外調査における注意点を説明した。内容は森林の遷移と更新の違い、階層構造や遷移に伴う種組成や多様性、さらに実習で訪れる森林を紹介した。植物の同定に関する資料を配布した。院生による現在行っている研究の報告があった。
○4月17日(日):大文字山のマツ林の再生(講義及び実習):山道から樹木の識別実習を行った。京都市街地を覆っていたマツ林の「マツ枯れの影響」とその後の森林の遷移について説明した。中腹では京都・国有林との共同研究として始まった「マツ林の更新」試験地を見学し、自然に落下するアカマツ種子による「天然下種更新」とその更新に適した自然環境について解説した。
○4月23日(土):東山・清水山のシイ林の拡大と種多様性(講義及び実習):シイなど照葉樹の分布が拡大している東山において、種の多様性の回復を目的とした森林施業について学んだ。
○4月24日(日):北山・八丁平二次林の林分構造(講義及び実習):人為的攪乱の程度が異なるいくつかの二次林の踏査を行い、近年のシカによる被害の拡大と、森林の更新に及ぼす地形・人為的攪乱の影響について検討した。さらに八丁平二次林では特異なヒノキ・モミ林分にベルト調査地を設け、調査地設定法について学んだ。
○4月30日(土)〜5月1日(日):芦生の二次林の林分構造と動態(講義及び実習):人為的攪乱が少ない芦生研究林における伐採後の年数が20年、45年の2林分における林分構造と更新状況を調査した。院生による現在行っている研究の報告があった。
○6月18日(土):芦生天然林の林分構造と更新(講義及び実習):研究林設定以来、85年以上人為的攪乱が記録されていない天然林において、林分構造を把握するとともに、構成種の更新の可能性、天然林における種多様性の維持機構に関して解説した。
 本セミナーでは農学部森林育成学研究室の呉初平君、岡田泰明君、生態学研究センターの清水良訓君、農学部森林科学科2回生の阪口翔太君が協力してくれた。


− 実 習 の 様 子 −

マツ枯れ跡地のアカマツの天然更新:大文字山 照葉樹林の伐採による種多様性の回復と
更新木の樹高測定:清水山
ヒノキ・モミ林のプロット設定:八丁平 伐採後20年を経過した天然林生の更新:芦生