少人数セミナー「世界の森林、日本の森林、現在・未来!」(報告)


担当教員:フィールド科学教育研究センター 助教授 芝 正己

 2006年度新入生向け少人数セミナー(ポケゼミ)“世界の森林、日本の森林、現在・未来!:The Future of Our Forests”の科目名で開講した本ゼミは、4月中旬のガイダンスからスタートし、本部での6回の講義(毎月曜日の午後1時から5時まで:講義の合間にフィールドセンター関連施設、植物園等の施設見学を組み込む)と1泊2日の芦生研究林での野外体験実習を行った。今回の受講生の内訳は、医学部(1名:女性)、工学部(1名:男性)、農学部(1名:女性)の計3名であった。本講義の目的は、地球規模で問題となっている世界の森林の状況(主に、熱帯林や北方林の減少・脆弱化・違法伐採)、日本での森林の保全・利用の現状(人工林管理,労働力,基盤整備等)を対比させながら、環境・経済・社会資源としての森林の将来的なあるべき姿を専門の異なる分野の全員で模索議論することである。具体的には、地球規模での環境悪化が世界的な問題になる中で、森林や林業の分野においても、これまでにない新しい知識や情報、技術が不可欠となっている。21世紀に向けて森林を持続的に管理し、その多面的な機能を発揮させるためには、従来の専門領域に止まることなく、異分野間の連携を図ることが必要であり、そのためにも、隣接する領域やこれまで無関係だと考えられてきた分野についての正確な知識の習得が求められている。その具現化として「森里海の連環」を教示しつつ、以下の内容構成で解説した。

[講 義]
 1:世界の森林とその特徴−諸外国の紹介(特に、東南アジアの熱帯雨林と極東北方林の現状)
 2:日本の森林・林業の現状(人工林管理、特に間伐問題、労働力、基盤整備、機械化)
 3:森林の利用と保全のバランス(森林情報・GIS、森林空間の機能区分・ゾーニング)
 4:新たな森林の管理−豊かな森へ(持続可能な森林管理−森林認証とCoC、合意形成)
 5:総括と討論(森林管理の方向性、森林管理から森里海連環管理へ)
[野外体験実習]
 1泊2日の日程で実施した芦生研究林での野外体験実習の概要は以下の通りである。
 初日は、本部から芦生研究林までの移動コースを、「郊外の土地利用や森林風景の観察」、「北山林業地域(中川森林、磨き丸太工場)」、「周山京北地域の森林(木材市場、大径木保存林)」、「南丹市美山町(由良川沿いの景観と土地利用、茅葺きの里、民芸資料館)」を順次見学した。翌日は、芦生研究林の技術職員の支援を得て、内杉谷から長治谷までのコースを、暖温帯林から冷温帯林への森林景観の変化を確認し、シカの食害地やクマ剥ぎ木(写真1)・カシノナガキクイムシ被害木等を観察した。さらに、由良川本流沿いのトロッコ軌道敷を樹木識別(写真2)を行いながら灰野集落地跡まで散策した。翌日は、後片付け、レポート作成を行って帰路に着いた。この時期、ちょうど森林科学の学生実習と重なったが、初対面にも係わらず、夕食後の懇談時も和気藹々の雰囲気であった。わずかな芦生での滞在であったが、フィールドでしか得られない何かを感じ取ってくれたような気がする。彼らのこれからの学生生活に期待したい。

 今回の実習を通して、(1)予備知識のための事前講義、(2)日程と実習内容の整合性、(3)参加者数と宿泊施設、(4)移動や見学の費用負担等の問題点が明らかとなった。



− 実 習 の 様 子 −

写真1 写真2