少人数セミナー「海洋生物の多様性」(報告)


担当教員:フィールド科学教育研究センター 教 授 白山 義久

 ポケゼミ「海洋生物の多様性」は、平成18年4月から6月にかけて、まず海洋生物学の基礎知識に関する講義を7回にわたって実施した。その後、8月29日から9月1日までの日程で、臨海実習を開催した。このポケゼミの参加者は、農学部資源生物の学生が圧倒的に多く、7名を数えた。残りの3名は、理学部、医学部保健学科、経済学部であった。男女比は、男子9名女子1名で、圧倒的に男子が多かった。
 臨海実習では、初日は海洋生物の解剖実習を行った。材料はホタテガイとスルメイカを使った。これらは必ずしも白浜周辺で採取できるものではないが、時間の関係から入手の容易なこれらの材料を鮮魚店で購入して利用した。学生ははじめて軟体動物の内部構造をじっくり観察することとなり、真剣に解剖に取り組んでいた(写真1)。
 二日目は、スノーケリングを行った。スキンダイビングの経験のある学生はほとんどいないため、実施はなかなか大変だったが、助手の深見裕伸氏とTAの鈴木豪氏の協力を得て、なんとか実施することができた。どの学生も、初めての海底散歩を満喫したようだった。この日は夜に瀬戸臨海実験所近隣の白浜町白良浜において、花火大会が開催されたので、学生全員で見物に出かけた。
 三日目は、瀬戸臨海実験所の所有する畠島の南側の砂浜の沖で、ドレッジ採集を行った。堆積物の採集とともに、メガベントスの採集も実施した。かつて有機汚染が田辺湾でひどかった時期にはほとんど姿を消していたヒトデの仲間のモミジガイが採集された。堆積物については、実験所に戻ってから、実験室内で、詳細なメイオベントスの観察を行った(写真2)。学生たちは、なれない手つきで、顕微鏡を操作しながら、ミクロの動物の世界をじっくりと見ることができた。
最終日には、レポートを作成し、提出後に解散した。
 昨年度からこのポケゼミは、フィールド研が協定を結んでいるNPO法人エコロジーカフェの関西支部が主催する海のエコツアーと共催するようになっている。今年度も多数のエコカフェのメンバーが参加し、学生と一緒にスノーケリングや顕微鏡観察を体験した。また、さらに今年度は、地球環境大学に白山が講師としてお邪魔した時に知合いになった受講生の方も3名参加された。学生にとっては、社会人と一緒に学ぶ体験をすることで、単なる臨海実習とはひと味もふた味も違う経験をすることができたものと思う。
 今年度は、定員10名が一杯となった。昨年度は、選抜のためにレポート課題を求めるとシラバスで明記したことが障害となってか、3名しか参加者がいなかったため、今年度は定員を超えた場合の選抜方法を抽選にしたことが幸いしたようだ。学生にとっては、負担の少ない抽選選抜を今後は採用することにしたい。


− 実 習 の 様 子 −

写真1 スルメイカの解剖に取り組む受講生たち
後ろ側は地球環境大学から参加した社会人の人たち
写真2 メイオベントスの観察に
真剣に取り組む受講生たち