少人数セミナー「木造校舎を造る:木の文化再生へ」(報告)
2006年 4月18日− 7月 4日


講師:フィールド科学教育研究センター 教 授  田中  克
                   教 授  竹内 典之
                   助教授  柴田 昌三
            地球環境学堂 教 授  小林 正美
                   助 手  小林 広英


 「森と里と海」のつながりを取り戻すうえで、森の保全は必要不可欠である。しかし、日本の森は、林業採算性の低下、山村の衰退、林業労働者の高齢化や後継者不足などから、間伐の不実行、伐採跡地への再造林の放棄や竹藪の拡大など人工林や二次林を中心に劣化が進んでいる。山村に活気を取り戻し、森の劣化を阻止し、森の保全を推進していくためには、日本特有の「木の文化」の再生を図り、国産材の需要拡大を進めることが不可欠である。本セミナーでは、5名の教員がリレー式に話題提供をし、受講生諸君と共に考え、議論することによって「木文化の再生」への道を追求することを目的に開講したものである。受講生は、法学部2名、経済学部1名、理学部2名、工学部1名、農学部3名の計9名であった。
 授業内容は、

  4/18   日本の森林:竹内 典之
  4/25   日本人と森林I:竹内 典之
  5/ 9   日本人と森林II:竹内 典之
  5/16   j.Podとセミナーハウスの建設:小林 広英
  5/23   木造都市:小林 正美
  5/30   京大セミナーハウスの見学:小林 正美・小林・広英
  6/10〜11 吉野林業地の見学:竹内 典之・小林 広英
  6/13   里山資源の管理I:柴田 昌三
  6/20   三年坂美術館見学:田中 克・竹内 典之
  6/27   里山資源の管理II:柴田 昌三
  7/ 4   木造校舎を造る−木の文化再生へ−:田中 克

である。セミナーは、毎回、フィールド科学教育研究センター北白川試験地内に設置されているj.Podにおいて実施した。また、今年度のセミナーでは、京大のセミナーハウス、吉野林業地、三年坂美術館の見学を取り入れた。
 セミナーに参加した学生たちは、日本特有の「木文化」や自らの将来に関わる環境の問題に大いに関心を示し、議論に熱心に参加していた。セミナー終了後に提出させた感想文でも、「今まで、狭いところしか見えていなかった私の目を大きく見開き、大きい視点で見ることをこのポケゼミは教えてくれました。そして、本当に自分だけでは経験できない体験ができ、見ること、聞くことが全て知らないことばかりで、毎回の授業がたのしかったです。」、「建築と森林という異なる分野を専門にする人々が連携して、j.Podを実用化させる段階まで持ってきた努力はものすごいものであると感じた。」、「今回の少人数セミナーで、木について時間軸上の視点で講義してもらえたことで、自分のとる行動が将来に大きな影響を与えることを少しばかり実感できたので、木の文化再生に貢献できる行動を模索していきたい。」、「木の文化を再生することは決して容易ではないと思います。しかし、不可能ではないと信じています。このポケゼミでは木文化の良さを改めて感じることができました。」、「今回のポケゼミは、建築や文化に関して、色々と考えるよい機会となりました。」、「現代における環境問題、木文化についての話題は、先が見えないものが多いけれど、このポケゼミを通して問題意識を深めたと同時にこれからの解決の可能性も感じることができたように思う。」等と記されており、十分に本ポケゼミの目的を達することができたのではないかと考える。