平成19年度 少人数セミナー 「森のつくりだすもの」  報告



講師:フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門
森林生態保全学分野 准教授 徳地 直子



 ポケゼミ"森のつくりだすもの"は、森は有形・無形のさまざまなものを私たちにもたらしてくれるが、森の実際の姿や森の作り出す機能の創出のためにどのようなしくみがあるのか、よく知っているとはいえない。そこで、森に入って、森にふれ、さまざまな森の性質をとらえることを目的としている。
本実習は、和歌山研究林において夏期休講期間に行われる。和歌山研究林はフィールドセンターの研究林においても集落から離れた自然にめぐまれた地域にあり、また人工林率の高い森林である。そのため、以前は人工林の育成に関する林学教室の実習が行われていた。このような特徴を生かし、自然の森林を体験するだけでなく、現在産業として厳しい状態にある林業についても考えるきっかけとしてもらいたいとカリキュラムを立てている。すなわち、
第一日目 研究林を源流のひとつとする有田川の下流地点に集合し、上流に河川水をサンプリング・調査しながら研究林にはいる。
第二日目 和歌山研究林が設置されて以来手付かずで残されている貴重な天然生林とそれをとりまく人工林内を散策し、樹木の識別を通して自然の営みを見つけ、天然林、人工林のそれぞれの特徴を学習する。
第三日目 人工林を管理することの重要性を学び、実際に間伐体験を行う。 というスケジュールである。
 終了後にレポートを提出してもらい、学んだことや感じたことなどをまとめてもらっているが、"身近にあってもはいっていったことがない"ことや、"3日という短い期間だったが森林に慣れてきた"、"現在森林が抱える問題が少しわかった"、などの意見があり、これから大学で学んでいく学生に森林生態系のしくみや森林と人との関わりについて少し何か感じてもらえたのではないかと思っている。