平成20年度 少人数セミナー「森林の再生と動態」報告


講師:フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門
森林資源管理学分野 准教授 安藤 信

 京都市市街地周辺林、奥山の芦生研究林、その中間に位置する北山・八丁平湿原周辺の天然林・二次林を踏査・調査し、森林帯、地形、遷移過程の違いに伴う種組成や林分構造の違い、そしてその動態について講義・実習を行った。セミナーは4、5月の土・日・祝日を中心に行った。
○4月25日(金):ガイダンス
昼休みを利用して日程・準備・注意事項を説明した。
○4月26日(土):森林の再生と動態とアカマツ林の更新
森林の遷移と更新の違い、階層構造、遷移に伴う種組成・多様性・成長の変化、さらに京都市周辺の森林の近年の変化について、データをもとに紹介し、院生による現在行っているアカマツ林の再生に関する研究報告、北白川試験地で樹木の識別法についての講義を行った。その後、大文字山で樹木識別実習を行うとともに、京都市市街地周辺の山々を覆っていたアカマツ林のマツ枯れの影響とその後の遷移について説明した。アカマツ林再生のための施業を行った国有林内の試験地において、マツ林の更新を促す地表処理について解説し、発生稚樹の確認、稚樹の成長に影響を及ぼす上層の残存木の調査を行った。
○4月27日(日):冷温帯二次林の地形、攪乱の違いによる林相の変化
北山・八丁平の地形・攪乱の歴史が異なる二次林の林分構造と動態とシカによる森林被害に関する講義を行った。現地では、固定調査地の林分構造、遷移の違いを確認するとともに、ヒノキが多い林分で直径成長量調査を行い、樹高の測定法を学んだ。
○4月29日(祝):シイ林の拡大と種多様性
シイなど照葉樹の分布が拡大している東山・清水山のシイを伐採した林分にプロットを設定し、残存する落葉樹やヒノキの直径、樹高の毎木調査を行った。
○5月4日(祝)〜5月5日(祝):冷温帯天然林、二次林の林分構造と動態
芦生研究林において、天然林を構成する樹種とその動態、二次林の更新について講義を行った。伐採後50年を経過した林分等の毎木調査及び16haの天然林大面積調査地の見学が行い、冷温帯の天然林、二次林の林相の違いとともに、急傾斜地で巨木を対象に調査を行うフィールド調査の難しさを体験した。
○6月1日(日):シイ林の拡大と種多様性(その2)
8年前に小面積に皆伐した施業地内で、更新してきた樹木の毎木調査を行い、陽樹と陰樹の成長と種の多様性の回復について学んだ。
今年度は天候や受講生4名の都合によって6日間の野外実習の日程調整が難しく、5月後半から7月前半に3日間の補講を行った。本セミナーでは農学研究科森林育成学D3の呉初平君、M1の中村真介君、農学部3回生の森岡信博君、4回生の後藤元保君が協力してくれた。
 



− 実 習 の 様 子 −