平成19年度 森里海連環学実習B「紀伊半島の森と里と海」 報告



講師:フィールド科学教育研究センター里域生態系部門
里地生態保全学分野 准教授 梅本 信也



紀伊半島南部の古座川流域と河口沖に広がる串本湾岸域までの自然域と里域(里山、里地、里海、里川)を対象に、フィールド調査の理論と実践的手法を学び、現地観察や聞き取り、各域から得られる各種サンプルの分析データに基づいて、当該地域の連環の諸相について考究する実習である。 フィールド研紀伊大島実験所を宿泊拠点(原則自炊)として、古座川上流に位置する北海道大学北方生物圏フィールド科学センター和歌山研究林と共催で開催している。 今年度は、9月21日(金)〜 9月27日(木)に、北海道大学生10名、京都大学生10名(農学部生6名・工学部生2名・総合人間科学部生1名)が参加した。 (参加教職員:北大和歌山研究林林長:野田真人、北大技術職員1名、フォールド研:梅本・徳地・宮崎・大和・深見。)日程と実習内容は以下の通りである。

21日(金) 13時半、JR串本駅前に集合、14時から紀伊大島実験所にてガイダンス、15時から串本湾岸、古座川流域の巡検(マイクロバス)、ミニ講義・質疑応答

22日(土) 森・里・川・海およびその相互連環性の高いテーマを参考にした仮説(課題)作り、KJ法を活用した実習班分け(「外洋と河川」「人と川の暮らし」「ダムのある川とない川の生物相比較」「ダム上流下流域の諸比較」を中心課題とする3〜6名からなる4チームを編成)、それぞれの担当教員と共に巡検

23日(日)〜24日(月) 4チームそれぞれに、テーマ別現地調査ならびに分析、検証、作戦会議、議論(上流地域に関係する2チームは北大和歌山研究林を調査基地とし、2泊)
 終了後にレポートを提出してもらい、学んだことや感じたことなどをまとめてもらっているが、"身近にあってもはいっていったことがない"ことや、"3日という短い期間だったが森林に慣れてきた"、"現在森林が抱える問題が少しわかった"、などの意見があり、これから大学で学んでいく学生に森林生態系のしくみや森林と人との関わりについて少し何か感じてもらえたのではないかと思っている。 25日(火) 古座川合流地点で4チームを集結し、合同実習として、チーム単位で河川の水質、流量測定や生物多様性を調査した。教員による専門的なミニ講義(環境、生物、地質、文化)も河川敷で実施された。午後は紀伊大島実験所に全員が戻り、紀伊大島に位置する江戸期からの魚付林を海側から見学した。夕食以降はそれぞれのチームが収集した諸データを全員で共有した。学生たちは明日の発表に備えた。

26日(水) 朝8時半から紀伊大島実験所講義室で各班が交替で調査内容を発表し、活発な質疑応答が行われた。参加教員の専門意見や森里海連環学解説を踏まえて、各チームは追加現地調査や資料収集が行われ、夕刻前から各自による報告書作成が始まった。

27日(木) 片付け、報告書作成提出・アンケート提出、解散
今回の森里海連環学実習・紀伊半島編では、これまでの反省をふまえて、室内講義的実習を現場発見を誘導しながらのプロジェクト型実習にした。また、議論を不活性化する大人数メール会議を止め、実質責任者が早め早めに膝を詰めて相談、さらに教員の意識や認識共有を図った。今後さらに、教員による実習と実習地域に対しての理解を深化させることも必要である。