芦生研究林内保存木の着生植物群集の保全生物学的研究

芦生研究林内に“保存木”として保護されている巨木には、多くの着生植物(樹上で生育する植物)が生育しています。この研究では巨木の生物学的な保全意義を再評価することを目的として、木登り技術を用いながら、地上からは確認できない高所の梢端や樹冠の隅々までの着生植物群集の調査を始めています。芦生の森に長く生存してきた巨木に成立する生植物群集の多様性について明らかにすることで、日常には知りえない、自然界に存在する共生の一端を垣間見ることが期待できます。そのことによって、そこにしか存在しない貴重な自然に対する私たちヒトの意識の変化が促され、巨木の保全意義について見つめ直すきっかけとなればいいなと思います。

実施者:

中西晃(京都大学農学研究科)

東若菜(京都大学フィールド科学教育研究センター)

石井弘明(神戸大学農学研究科)

神崎護(京都大学農学研究科)

 

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ロープと専用器具を用いて樹木に登り、樹冠での調査を実施します。樹上で安全に作業するため、かつ保存木や周辺の生態系を傷めないための配慮です。

 

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写真ではどこが枝なのか分からないくらいに、枝や幹の表面は着生植物に覆われ、樹冠部は生命力に満ち溢れています。

 

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茶色に見えているところも近づいて見てみると、マットのように敷き詰まったコケ類やシダ類が枯れて堆積して土壌のようになり、それを基質として新たな植物が芽生えています。

 

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巨木の枝葉は空間を複雑に埋めることで樹上特有の環境を生み出し、多様な生物種の生育場所を提供しています。このような環境が形成されるまでには何十年、何百年の時間が費やされています。

 

~大学の森を守ろう~