京都大学芦生研究林では、施設にかかわるさまざまな問題を解決するため、日ごろから取り組んでいます。
植物の保護
アシウテンナンショウやアシウアザミなど、希少な植物の保護を進めています。一般観光客の立ち入る地域を制限し、原生林エリアへの立ち入りはガイドツアーのみに許可を与えるなどにより、踏み荒らしや盗採の被害を軽減しています。
また、地元NPOの協力を得て、カシノナガキクイムシという寄生虫が媒介する伝染病「ナラ枯れ」からミズナラ・コナラを守るための対策や、京都府立植物園と協力した希少種の遺伝子資源の系統保存なども実施しています。
施設のメンテナンス
事務所構内には、事務所棟や学生宿舎、資料館(斧蛇館)、車庫、倉庫、職員宿舎などがあります。施設の老朽化は進んでいますが、日常のメンテナンスは怠らず、研究や教育に支障が出ないように、利用してくれる学生や研究者が快適に過ごせるように努力しています。冬場は、事務所構内の除雪や屋根の雪下ろしも大事な仕事です。
※29年度には資料館・斧蛇館の一部を改装し、新しく実験室を開設しました。実験室内に、芦生研究林基金へのご寄付の一部を使用させていただき、ガス湯沸かし器を設置しました。
歩道・林道の整備
広大な研究林へのアクセスを確保し研究を進めるためには、歩道や林道の整備が欠かせません。ブルドーザーなどの重機を運転して道を補修するのも、大学職員の重要な役目です。
※老朽化が進み錆びついた重機に代わり、芦生研究林基金へのご寄付の一部を使用させていただき、新しく油圧ショベルを購入しました。歩道や林道の整備で活躍しています。
防鹿柵の設置
総延長1.5kmにおよぶ大規模なシカよけの柵(防鹿柵)を設置しています。2006年に設置された防鹿柵のおかげで、柵のなかでは豊かに下草が育ちはじめています。さらに、2016年には林内に新たな大規模防鹿柵を設置しました。防鹿柵の設置は、単に植生を保護するだけでなく、植生の変化を対象とした学術研究にも活かされています。
豪雪地帯である芦生の森では、防鹿柵のメンテナンスも課題です。雪の重みで柵がこわれるのを防ぐため、毎年秋のおわりにネットをおろし、春の雪解けの直後にネットを設置しなければなりません。市民ボランティアのみなさんの助けをお借りしています。
地元猟友会の協力によるシカの個体数調整
生息頭数のモニタリングの結果にもとづき、南丹市の猟友会にご協力いただき、シカの個体数調整を春と秋に実施しています。2008年から2015年まで、99頭を捕獲しました。
狩猟塔の設置
芦生研究林の核心地域内でのより効果的な捕獲方法として、芦生研究林の湿原エリアに狩猟塔を建設しました。塔は木造で高さは6m、射撃場所で長時間待機できるように4㎡の広さを確保しています。多雪地でもあるため積雪に耐えられる構造です。現在運用開始を検討中です。