樹木に着生するコケに関する群集生態学的研究

コケ類は小さく目立たない存在であるものの、森林生態系における炭素循環や固定能力、保水機能に貢献し、さまざまな生態系サービスを人間社会に提供しています。しかしながら、その豊かなコケ類の多様性がどのようにして維持されているのか、そのメカニズムはまったくと言っていいほど分かっていないのが現状です。私たちは、①着生コケ類の宿主特異性(着生コケ類は、それぞれどの程度樹木を選り好みしているのか)」と「②着生植物の群集集合則(着生植物の種数や種組成に与えている環境変数や着生植物同士の競争効果)」を明らかにすることを目指して調査をしています。

実施者:

辰巳晋一(横浜国立大学環境情報研究院)

大崩貴之(京都大学人間・環境学研究科)

東若菜(京都大学農学研究科)

(東さんによる研究紹介:私の研究の特徴のひとつは、ロープや専用の器具を用いた木登り調査スタイルです。木登り技術によって、地上から見上げるだけでは分からない樹冠の生態系や環境に触れることができます。高木や高齢木の研究は、対象が大きいだけに未解明な知見が多く残されています。樹木の特徴として、陸上生態系内において最大かつ長寿であることが挙げられますが、そのような大きく高齢な樹木はどのように環境と向き合い生育しているのでしょうか?彼らの生きざまを、科学的な視点から解き明かしていきたいと思っています。芦生研究林は広大な面積が原生的な森林として維持されてきており、そのため林内には巨樹が多く点在しています。一つの地域にこれだけ多様な種の巨樹が多数生育している場所は大変珍しく、高木や高齢木を研究対象とし、巨樹を愛する私のような研究者にとっては貴重な森林であり、研究意欲の駆り立てられる場所です。)

 

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由良川源流域である芦生研究林はたくさんのコケ類が生息しています。もしもコケ類がいなかったら、私たちが受ける印象もだいぶ変わってしまいそうです。

 

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幹に着生しているコケ類を丁寧に特定していきます。持ち帰って顕微鏡で見なければ特定できないものもたくさんあります。

 

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コケが着生している樹皮のでこぼこや様々な特性も同時に調べます。

~大学の森を守ろう~